サッカー日本代表は現地14日、北中米ワールドカップのグループステージ初戦でオランダ代表と対戦し、2−2で引き分けた。世界的な強豪と渡り合うために森保一監督が講じた策の一つが、左シャドーに前田大然を起用したことだった。

上写真=ハードワークでチームを支えた前田大然。勝ち点1の獲得に貢献した(写真◎JMPA毛受亮介)

僕的には久保と前田が今日のMVP(堂安)

 南野拓実、三笘薫が不在の今回のチームで、3-4-2-1の左シャドーを誰が務めるかに注目が集まっていた。これまで代表において同ポジションでプレーしたことのある候補を挙げれば、伊東純也、中村敬斗、鈴木唯人、後藤啓介、塩貝健人、そして大会直前に追加招集された町野修斗がいる。さらにボランチの主軸を担う鎌田大地もプレー可能だった。

だが、森保一監督が重要な大会初戦に起用したのは、ここに名前を挙げた選手たちではなく、これまで代表でほとんど左シャドーでの実績のなかった前田だった。

 なぜ、前田なのか。そこには、相手のビルドアップを封じる明確な意図があったと思われる。

 オランダのビルドアップは、右センターバックのヤン・ポール・ファン・ヘッケから始まるケースが非常に多い。敵のプレスをかわすポジション取りがうまく、機を逃さずに敵陣深くへ縦パスを差すプレーを得意とする。日本がここに自由を与え、局面を進めるパスを許せば、たちまちピンチに陥ることは明白だった。

 そんな相手のストロングポイントを警戒するからこそ、前田をファン・ヘッケと対面する左シャドーに置いたはずだ。ビルドアップのキーマンであるアンカーのフレンキー・デ・ヨングへのパスルートは、1トップの上田綺世が背中で消しながら遮断し、前田は起点となるファン・ヘッケの監視役を担った。

 それでも想像以上にオランダのビルドアップは巧みで、立ち上がりの数分間以外は、前田が高い位置から相手CBを捕獲するシーンは多く作れなかった。必然的に日本は後退を余儀なくされ、ブロックを作って守る時間が長くなった。

 ただ、前から常にプレッシャーをかけられなくとも、前田は次善の策を愚直に遂行し続けた。ゲームキャプテンを務めた堂安律が試合後にこう語っている。

「みなさんにはどう見えたかわからないですけど、シャドーのタケ(久保建英)と(前田)大然の頑張りが本当に(よかった)。今日は彼ら2人がいなければ、おそらくもっとやられていたと思うし、僕的には彼ら2人がMVPだと思う」

 相手のサイド攻撃の担い手が上がってくればウイングバックが縦を切り、内側に誘導したところでシャドーが挟み込んでボール奪取を狙う。この連動した対応が、右サイドでは堂安と久保、そして左サイドでは左ウイングバックの中村敬斗と前田の間で何度も見られた。

 堂安によれば、シャドーとウイングバックで相手のサイド攻撃を封じるのは「練習していた」形だという。先制された後、再びリードを許す苦しい展開になってもチームが崩れなかったのは、焦れずに愚直に守り続けられたからだ。それが最終的に貴重な勝ち点1をもぎ取る結果へとつながった。

 まだ初戦を終えただけで、手にした勝ち点は1ポイントに過ぎない。グループステージ突破は、次戦以降の戦いにかかっている。

 しかし、土壇場で追いつかれたオランダと、追いついた日本。どちらがこの大会をポジティブにスタートさせることができたのか。その答えは、明らかだろう。

取材◎佐藤景【現地】