上写真=トレーニングで切れのある動きを見せていた田中碧(写真◎Getty Images)
目指すのは「勝利とアピール」の両輪
アウェー、しかも北中米ワールドカップ出場国であるスコットランド、イングランドとの連戦に臨む今回の遠征は、日本代表にとって極めて貴重な機会と言える。
対戦相手となる両国の選手が多くプレーするイングランド・プレミアリーグのリーズ・ユナイテッドに所属する田中碧も、当然そのことを理解していた。
「イギリスでやっているので、両チームとも(対戦が)楽しみですし、チームとしても、やっぱり勝つっていうことも楽しみというか。イギリス人がたくさんいるイングランドのプレミアリーグでやっているので。もちろん1試合勝ったからって別にイングランドより上とかそういうのではないですし、スコットランドもそうですけど、ただ(日本の力を)証明する機会ではあると思う。チームとして勝つということと、個人としてもワールドカップに行くという意味では、やっぱりアピールというか、いいパフォーマンスをしたいと思う。それは全員、思っていますけど、その両輪を叶えらればいいかなと」
リーズでは昨季、プレミアリーグへの昇格に貢献しながらも、今季は出場機会が限られている。リーグ戦では19試合に出場しているものの、先発は7試合。2026年に入ってからは一度も先発していない。だが、本人は現状を冷静に受け止め、前を向いている。
「もちろん悔しいです。それはやっぱり大前提にある。ただ試合に出るとか出ないとかって、自分じゃコントロールできない部分もあるし、自分のチームだけじゃなく、今までいろんなサッカーしてきた中で、良いパフォーマンスをしても出ない選手もいるし、逆に悪いパフォーマンスしても出続ける選手もいる。そこは自分がああだこうだ言うことじゃなくて、自分がピッチに入った時にやるだけかなと。もちろん自分の中でも課題があるけど、思っていた以上にやれているというのもある。そこは自信にもなっています」
ここまで、FAカップやリーグ戦に途中出場した際に存在感を発揮しても、定位置を確保するには至っていない。その競争の激しさこそが、プレミアリーグの厳しさだと田中は感じている。
「試合に出るための競争率、そこにプレミアリーグの難しさも感じるというか。それがどのチームでもやっぱり高いと思うし、そこも含めて、プレミアリーグかなって思うので。その競争に勝っていかなきゃいけないし、少し出られないからって挑戦を諦める理由にはならないので。自分のサッカー人生において、いいチャレンジはできてるし、引き続き、よりもっとやらなきゃいけないかなと思います」
今季がワールドカップ直前のシーズンであることを踏まえ、現状をどう捉えるかという点についても話は及んだ。
「ワールドカップが迫っているという意味で、多少、焦りはありますけど、どの選手も全体にそういう時期があると思う。(鎌田)大地君の去年(昨シーズン)もそうですし、話したりしますけど。たまたまそれがワールドカップの前だったんで、多少、普段よりも焦りだったり、不安っていうのは生まれはしますけど、サッカー人生においてそういう時期っていうのはあるので。ただそこで自分が崩れたら終わり。自分を信じて、こういう局面っていうのは何度か訪れて、それでもなんとかやってきて、ここまで来ているので。そこはブレずにやらなきゃいけないというか、やれればいいと思います」
前回のカタールW杯では、グループステージ突破のかかったスペイン戦で、三笘薫のクロスに体ごと飛び込み、殊勲の決勝ゴールを挙げた。しかし、その勢いを駆って臨んだラウンド16のクロアチア戦では、延長後半から出場したが、チームはPK戦の末に敗退した。
「前回もそうでしたけど、何があるかわかんないのでサッカーって。だから自分の立場とか、そういうことではなく、自分が持っているものを毎試合出す。チームのために出すっていうことが必要だと思っています」
W杯で感じた悔しさを晴らせるのは、やはり同じW杯の舞台でしかない。だからこそ、もう一度、あの場所へ。田中は今回の連戦で今の自分を出し切り、あの日の続きを味わうために「勝利とアピール」を同時に実現するつもりだ。
取材◎佐藤景[現地]