上写真=ボリビア戦は森保一監督が指揮を執る100試合目。「勝ってお祝いしたい」(写真◎青山知雄)
「考え方一つですべて変わる」
ハイプレスなのか、ブロックを敷くのか、ポゼッションするのか、引き込んでカウンターで攻めるのか、などなど、どんな戦術を採用すべきか、という議論がいつもあちこちで沸き起こる。活動期間が短い代表レベルだと、クラブのように時間をかけた積み上げができないから、なおさらだ。
日本代表のキャプテン、遠藤航が示したのは、いわば一発回答。いわく、「臨機応変」である。
「別に自分たちの形を決めすぎていないところが逆にいいというか、相手のやり方に対して自分たちはどう守るかとか、どう攻めるのかは、もちろん基本的な形はありますけど、その都度、相手によって臨機応変に対応していく、みたいな。そこが、日本人の戦術理解度を考えたときに一番の良さなのかな」
遠藤に出番は回ってこなかったが、ガーナ戦もそうだ。
「昨日の試合に関しても、(1点目につながった)ああいうショートカウンターというか、相手も意外に蹴ってもきましたけど、つなぎたいみたいなところもあった中で、選手たちがしっかり判断してプレッシャーに行くところと、ちょっとブロックを敷いて守っていくところ、長いボールに対してのセカンドを拾うところだったり、それぞれ判断は良かったんじゃないかな」
相手の出方を見極めた上で、時間や状況によって自分たちの戦い方を適切に変化させる。チームが目指す主導権を持った戦いとは、「最強の臨機応変」とも言えるだろう。
そんなガーナ戦でまたも称賛を浴びたのは、佐野海舟だった。ボール奪取から持ち運んでカウンターから南野拓実へラストパス、これが16分の先制ゴールの見事なアシストになった。遠藤と同じポジションだ。
「戦力が上がることは素晴らしいと思うので、競争がある中でやらなきゃいけない。長谷部(誠)さんがいなくなったロシア大会後には、誰が次にボランチをやるんだ、ボランチがいない、みたいなことを言われて、自分はそこから引っ張ってきて代表にいて、いまはもうボランチの選手層はすごく厚くなっている」
遠藤が体現してきた「積み上げ」である。
「自分が引っ張ってきて、また若い世代が出てきているところに関しては、自分のやってきたことが代表に貢献できているという考え方もできます。ただ、別にスタメンを譲るとか思っていないし、まだまだ負けん気は出していかなきゃいけない。そこの考え方としては両方持っている感じですね」
自分が成し遂げたことの象徴として若手がのし上がってきて、いま、彼らと競争できる。これこそ「日本代表冥利」と言えるのではないだろうか。
所属するリバプール(イングランド)では、試合終盤に投入される「クローザー」として起用されることが多く、コンディションを問う声も多い。
「そこはみんなが心配してくれているけれど、まあでも、あんまり気にしてないんですよね、個人的には。コンディションの問題ってずっと言われてきていますから。試合に出ていたら出ていたで『疲れてますか?』みたいな話で(笑)。出ていなかったら出ていなかったでコンディション懸念みたいになってるんで、そこは考え方一つですべて変わると個人的には思っています」
というわけで、一切の心配は無用というわけだ。強がりでもなんでもなく、自信があるから。
「自分はいまの状態でもワールドカップで高いパフォーマンスを発揮できる、そういう自信を持って挑める覚悟があるんで。周りはもちろんいろいろ言うとは思いますけど、大事なのは結局、最後にワールドカップで結果を残すか残さないか。選手それぞれいろいろな立場でワールドカップを迎えるので、最後はいかにワールドカップに懸けられるかみたいなところだと思います」
こういう思考に、過去の経験がにじみ出てくる。ボリビア戦ではその懸ける思いをプレーで示すつもりだ。
「逆に言うと、試合にそんなに出ていない分、代表を含めて、1試合に対してのモチベーションが個人的にはいまは高い。そこをただ単純に発揮していくだけですかね」