上写真=パラグアイ戦で先発し、89分までプレーした佐野海舟(写真◎毛受亮介)
守備でどういうふうにコントロールするか
室内でトレーニングするリカバリー組。一番左が佐野海舟(写真◎青山知雄)
辛くも引き分けたパラグアイ戦で、日本代表のポジティブな要素を探すなら、真っ先に佐野海舟のプレーぶりが挙げられる。ボール奪取能力と推進力が前半から際立っていた。
最終ラインの裏を攻略され、先制を許したあと、小川航基の同点ゴールをお膳立てしたのも佐野だ。トラップから流れるように反転して強烈なシュートを放った小川のプレーはもちろん称賛に値するが、トランジションの中で素早くボックス手前にいるこのストライカーに縦パスを送っている。チームコンセプトである『縦を意識する』プレーを実践してみせた。
「数字で貢献できるに越したことはないですけど、まずはチームとしてやるべきことをぶらさずに。その中で自分のやるべきことっていうのをしっかり整理してやっていく必要があると思っています」
最初の同点ゴールは、これまで磨いてきた自身の力がチームの狙いと結びついた瞬間でもあった。
一方、守備においてはチーム全体としてプレスがはまらず、難しい時間帯があった。佐野は個の力で何度もボール奪取に成功していたが、プレー選択の面ではやりにくさを感じていたという。
「相手チームがダブルボランチ2人とも落ちたときに、すごく難しかった。もう少しチームとしてブロックをしっかり引くことも大事だと思います。ただ1失点目のシーンはブロックは引けていたけど、ボールに対して出ていなかった。そこはもう少し、チームとして守備でどういう風にコントロールするのかが必要だと思います」
試合巧者のパラグアイはボランチが代わる代わる後方に下がってビルドアップするなど、日本のプレスを回避する術を持っていた。1失点目はセンターサークル付近にいたボールの送り手にプレッシャーをかけられず、アルミロンに最終ラインの背後を取られることになった。あの瞬間にオフサイドを取ろうとしたマーカーの瀬古歩夢の判断ミスもあったとはいえ、このレベルの相手になると点と点を合わせるプレーでゴールをこじ開けられるケースもある。日本はローブロックを築いている状況で、どのように相手にプレッシャーをかけるのかが曖昧になってしまった。
「あれだけ人数が多い中、前線の選手だけでは追えないので、勇気を持って前に行くのか。そこをフォローしながらも後ろのカバーをできるのが1番いいとは思いますけど」
ボランチによる判断が非常に重要であることは佐野自身も認識していた。
「(前からいくのか留まるのか)守備の選手の意見と前の選手の意見のどちらもわかりますし、そこをコントロールできるのはやっぱり真ん中の選手だと思う。それは本当に流れを見ながらブロックをずっと引くわけにもいかないと思うので、そこのバランスっていうのは自分としてももう少し考えないといけない。そこのコントロールができるようにならないと厳しいなと思っています」
ボールを刈り取る能力に加え、奪ったあとの推進力も示した。次に求められるのは、『真ん中』の選手としてチームをコントロールする力だ。それがピッチで発揮されるようになったなら、佐野は間違いなく北中米ワールドカップのピッチにたどり着くだろう。