サッカー日本代表は10日、キリンチャレンジカップ2025でパラグアイ代表と対戦する(19時20分開始/@パナソニックスタジアム吹田)。強豪国ひしめく南米予選を6位で突破し、4大会ぶりのFIFAワールドカップ(W杯)出場権を獲得したパラグアイ代表はどのようなチームなのだろうか。

上写真=パラグアイは南米予選を6位で突破。失点数は2番目少ない10失点だった(写真◎Getty Images)

継続路線の中で若手を招集

 試合会場で9日に行われた前日記者会見。グスタボ・アルファロ監督は饒舌だった。

「パラグアイ代表はこれまで長い予選を戦い、15年ぶりにW杯出場権を獲得しました。W杯はパラグアイ代表にとって大きな夢でしたし、同時に大きな挑戦でもあります。そして、その出場権を獲得したことによって、今、代表チームは次なるフェーズでの仕事をスタートさせたところです」

 赤と白の縦縞がトレードマークになっているパラグアイ代表が、最後に出場したW杯は2010年の南アフリカ大会だ。ラウンド16でPK戦の末に日本代表を破り、同国史上初となるベスト8進出を果たした。駒野友一が最後のPKを外して大粒の涙を流した試合の相手がまさにパラグアイ代表だった。

 ただ、あの大会を最後にW杯の舞台には辿り着けていない。実力拮抗の南米予選で苦しみ、ブラジル代表やアルゼンチン代表といった強豪国の後塵を拝して10年以上にわたって低迷を続けていた。

 そんなパラグアイ代表を復権に導いたのが、アルゼンチン出身のアルファロ監督だった。

 北中米W杯に向けた南米予選は2023年9月から始まり、パラグアイ代表では大会中に2度の監督交代があった。開幕から2戦未勝利となったタイミングでギジェルモ・バロ・スケロット監督の首が飛び、指揮権を引き継いだダニエル・ガルネロ監督も2024年夏のコパ・アメリカでのグループステージ敗退を受けて解任に。その後任として招へいされたアルファロ監督は、「伝統」を大事にするチームづくりでパラグアイ代表を危機的な状況からW杯出場権獲得へと一気に引き上げた。

「パラグアイ代表を率いているのは1年前からで、その時はすでに南米予選が始まっていたので、すぐにでも結果を出すことが求められました。当時のパラグアイ代表が自力で出場権を獲得することは難しい状況でした。そこで非常に大きな意味を持ったのが、パラグアイサッカーの伝統的な特徴でもあるハードかつ力強く、果敢に相手に立ち向かっていくディフェンスのマークです。ラスト1球であるかのように全てのボールに対して競りにいく。そういった戦い方があったからこそ、格上の相手との対戦でも力の差を縮められたと感じています」

 18試合を戦ってW杯への切符を争う南米予選で、パラグアイ代表は全体で2番目に少ない10失点という堅守を武器に勝ち点を積み重ねた。2失点以上を喫したのはアウェイでのボリビア代表戦とコロンビア代表戦だけで、クリーンシートが10試合。ホームでは
ブラジル代表を15年ぶりに破り、アルゼンチン代表にも16年ぶりの勝利を収めた。さらにこれまで一度も勝ったことのなかったペルー代表とのアウェイゲームでも勝ち点3をつかむなど、アルファロ監督は次々に快挙を成し遂げてきた。

 9月に発表された最新のFIFAランキングでは前回7月から一気に6ランク上昇し、南米勢で6番目となる37位につけている。コパ・アメリカで3連敗した後、アルファロ体制発足からの南米予選12試合で6勝5分1敗と一度しか負けがないことも、パラグアイ代表がいかに心境著しいチームであるかを物語っていよう。

 4-4-2あるいは4-2-3-1を基本システムとした“ラ・アルビロハ”は、強固な守備ブロックを最大の武器としている。とりわけスペインやイングランドで実績豊富なオマール・アルデレテとキャプテンのグスタボ・ゴメスが組むセンターバックは自陣ゴール前で圧倒的な対人の強さを発揮し、守護神のロベルト・フェルナンデスとともにあらゆるボールをペナルティエリアから弾き出す壁になる。

 日本代表の森保一監督が「南米予選でも攻撃のキーマンとして活躍していますし、彼のチャンスメイクは注意していきたい」と述べ、「警戒しなければいけない選手」に挙げたミゲル・アルミロンを中心としたカウンター攻撃も非常に鋭い。南米予選では18試合で14得点と決定力不足に苦しんだが、明確な課題として認識されている以上、アルファロ監督は今回のアジア遠征での2試合を通して何らかの改善策を講じてくるはずだ。

 招集メンバーにもこれまでの主力選手が数多く名を連ねており、W杯に向けたチームづくりは継続路線と言っていいだろう。一方で昨季までブライトンで三笘薫のチームメイトだったフリオ・エンシソらが不在な中、ラツィオからメキシコのアトラスへ期限付き移籍中のFWディエゴ・ゴンザレスと今夏からマンチェスター・ユナイテッドの一員となった18歳のDFディエゴ・レオンが初招集された。また、ミランの下部組織出身で1年近くA代表から遠ざかっていたMFウーゴ・クエンカが呼び戻されるなど、若い新戦力の発掘も狙っている。アルファロ監督も「若い選手たちがパラグアイ代表の中でそれぞれの居場所を勝ち取るために戦っている」ことを強調し、彼らの突き上げを大いに期待しているようだった。