上写真=守備機会そのものは多くなかったが鈴木彩艶は好守でチームを救った(写真◎Getty Images)
守備陣は賢い守備ができていた
確かな成長を感じさせるセーブだった。
67分、自陣の左サイド、ボックスのすぐ外で南野拓実がエリック・リラを背後から倒して、FKを与えてしまった。0−0でゲームが推移する中、絶対に失点は避けたいところ。
ロサーノが右足で蹴った鋭いボールを、ニア側でフリーになっていたリラがヘッドでとらえてシュート。ドンピシャのタイミングだったが、ゴールマウスに立っていた守護神は冷静だった。
「ボールにアタックしない判断をして、シュートの準備をして、そこからボールに対しての方向も良かったですし、まあ準備が良かったんで、しっかり止まって、手の位置も良かったですし。落ち着いた対応ができたかなと思います」
彩艶は素早く右に飛び、ボールをストップすると、相手がこぼれ球を詰めることのない場所へと弾き出した。
称賛に値するビッグプレーだが、今の彩艶にはこれぐらいはやって当然と思わせる凄みがある。所属するパルマで自らを磨き、ヨーロッパで評価を高めるGKはそもそものプレー水準が高い。
この日、ゴールを奪うことができなかった日本だが、最後まで奪われることもなかった。手放しで喜べる内容ではないものの、収穫もある試合だった。無失点に抑えたことはその一つ。
「守備としては、(相手は)今日、4―3―3で来ましたけど、1トップのヒメネスから縦に入ったところのフリックだったり、そこから持っていかれる部分を警戒していた。でも基本的にシュートが枠に飛んでくることもなかったですし、そこは守備陣が非常に賢く、インターセプトもしっかり狙っていましたし、賢い守備ができていた」
引き締まった試合を実現したのは、途中で板倉滉が負傷交代するなどアクシデントに見舞われながらも、最後まで守備陣が集中力を切らすことなくプレーしたからに他ならない。最後尾で構える彩艶はシュートを打たれる場面そのものは限られたが、安定感と安心感は際立っていた。
「ゲーム内容を見ても、しっかりと戦えていたと思いますけど、選手全員がやっぱり勝てた試合だと思っていますし、得点できた試合だと思っている。ポジティブにこの結果をとらえながらも質を上げていきたい」
ランキング上位国相手に無失点で試合を終えても、それだけでは当然ながら満足感はない。目指すところはさらなる高みだ。彩艶は来年のワールドカップに向けて、ここからさらに自身の成長を加速させ、チームの向上を強く求めていくーー。