日本代表は現地6日(日本時間7日)に、アメリカ・オークランドでメキシコ代表とテストマッチを行う。注目の一戦で1トップとして先発濃厚なのが、FW上田綺世(フェイエノールト)だ。今回の活動でも印象的なシュートを連発するストライカーは長らく日本サッカー界が追い求めてきた「釜本二世」になり得るかもしれない。本家が繰り返し言っていた「量」の大切さを知るからだ。

上写真=メキシコ代表戦で先発すると目されている日本代表のFW上田綺世(写真◎青山知雄)

むしろ量自体が質なのかもしれない

「今の選手はボールを蹴っている回数が足りない」

 そう言ったのは先月10日に亡くなった日本史上最高のストライカー、釜本邦茂さんだった。

 日本サッカー界は半世紀以上もの間、メキシコ五輪で得点王になり、銅メダル獲得の立役者になった釜本さんの後継者を求めてきた。

 だが、いまだ釜本二世は現れていない。

 そんな状況を踏まえて、釜本さん自身に「なぜ自分に匹敵するようなストライカーが現れないのか」とたずねたことがある。その答えが、冒頭の言葉だった。

 しかし今、日本代表の9番を背負うストライカーはこう言ってのける。メキシコ戦前日(現地5日)のトレーニング終了後、自身のシュートが強烈である理由を問われたときだった。

「僕も(理由は)わからないですけど、小さい頃から打っている本数が違うんじゃないですか。もうずっとシュートは打ってきたし、多分、誰よりも打っているから、本数は。サッカーをやってきた歴で考えても、たぶん周りの選手と、生涯打っている本数が違う気がします」

 アメリカ遠征中の日本代表のトレーニングで、上田は連日、印象的なシュートを放っていた。圧倒的なスピードと強さに、練習でゴールマウスに立つ鈴木彩艶やかつて鹿島でともにプレーした早川友基が驚き、他に類を見ないと称賛するほどの威力だった。

 所属するフェイエノールトでも3戦4発と絶好調。誰よりもシュートを打ってきたことが今、大きな実を結ぼうとしているのかもしれない。

「例えば、俺が誰か小学生に効果的なシュート練習を教えても、それで僕のシュートが手に入るわけじゃない。色々やった上で自分の中でその質が見つかって、色んな角度とか打ち方、色んなことをやることによってやっぱり筋肉がついて、もちろん土台があってこそなんで。やっぱり量って自分でやっていくもので、むしろその量自体が質なのかもしれないし。まずやらないと話にならないし、続けることですよね。
 質ばっかり追っていても結局、質より量をやっているやつには勝てない。そこをまず考える必要がないんじゃないかなと思う」

 質を凌駕するのが、量。そしてその量こそが上田と他のストライカーとの違いを生んでいる。

 量に自信を持つ選手が今の日本代表にもしっかりいて、その選手が自身が東京五輪前から期待していたストライカーだと知ったら、釜本さんはなんと言っただろうかーー。

文◎佐藤景