北中米ワールドカップ・アジア最終予選の初戦となる9月5日の中国戦で、日本は7-0と大勝。どのゴールも素晴らしかったが、やはり最も印象的なのは伊東純也の「復活弾」だろう。性加害疑惑の週刊誌報道と戦いながら、7カ月ぶりに出場した試合での活躍を振り返る笑顔は、とても清々しかった。

上写真=伊東純也のゴールでスタジアム全体が大きな喜びに包まれた(写真◎Getty Images)

■2024年9月5日 北中米W杯・アジア最終予選1節(観衆52,398人@埼スタ)
日本 7-0 中国
得点:(日)遠藤航、三笘薫、南野拓実2、伊東純也、前田大然、久保建英

2つのラッキー

 右外の久保建英からペナルティーエリアの中で受けた伊東純也は、ゴールを向いて左足を振った。ボールはDFの足に当たってゴール左へと吸い込まれていく。イナズマ純也、復活の一撃!

「ゴールを取れたのは相手に当たってラッキーだったんですけど。良かったなと」

 照れ笑いには初々しさがのぞく。

 5-0とするこのゴールは、昨年10月のチュニジア戦以来の一発。これでこの日の背番号と同じ、代表で「14」ゴール目とすると、久保をはじめ仲間が駆け寄ってきて何重にも抱擁の輪ができた。

「喜ぼうと思ったらもうみんなが周りにいて。さっき映像でも見たんですけど、ベンチにいたメンバーも本当に喜んでくれたし、スタジアムの皆さんも喜んでくれて、本当に良かったなって思ってます」

 仲間の喜びの輪が解けたあとに、ゴール裏のサポーターに深々と頭を下げた。

「自然に出たんですよね。本当にありがとうございますっていう気持ちで。これまでのことも、今日の声援のこともそう」

 今年1月、アジアカップの期間中に週刊誌によって性加害疑惑が報じられると、そのままチームを離れ、以降、およそ7カ月にわたって代表の招集を見送られてきた。しかし、今回の活動からついに復帰。63分にピッチに入るときにはスタンドから大歓声が巻き起こった。伊東はそれを全身で受け止めていた。

「やっぱりモチベーションが上がりましたし、うれしかった。ゴールを取ってやろうって、本当に思ってました」

 だから、悔しかった7カ月を取り戻す最初の一歩にふさわしいゴールだった。

 ただ、これだけで終わらせない。87分には右のワイドで受けてドリブルで運んでファーへクロス。ワンバウンドしたボールを前田大然がヘッドで押し込んで、6点目を導いた。さらに90+5分には、右からのクロスが流れて左で受けて戻すと、久保が左足で豪快に突き刺して、2アシストだ。

「スムーズに入れましたし、連係の部分もうまくできたと思います。クロスもアシストの部分も狙い通りで、大然ならあそこに入ってくるだろう、というところもうまくできたので、 よかったんじゃないかなと思います」

 では、だめ押しのだめ押し、久保が決めた7点目は?

「本当は自分で打とうと思ったんですけど、タケが本当にずっとすごく叫んでたんですよ。純也くん純也くん純也くん、って。試合後に話したら、やっぱりゴールがほしかったって。僕が打ったら相手に当たる確率もあったので、任せてみようかなと思ったら入ったので、アシストはラッキーでした」

 ラッキーなゴール、狙い通りのアシスト、そして再びラッキーなアシスト。ワールドカップ 最終予選の始まりは、最高の復活劇になった。