日本代表はミャンマー戦に5−0で勝利を収めたが、的確なポジション取りと優れたスキルで攻守に躍動した守田英正はチームを快勝に導いた立役者の一人だろう。9日、シリア戦に向けたトレーニング終了後に守田が取材に応じた。

上写真=9日、シリア戦に向けてトレーニングする守田英正(写真◎佐藤景)

良いところばかりじゃない

 ミャンマー戦でボランチを務めた守田のパフォーマンスは、圧倒的だった。

 攻撃ではビルドアップの中心となり、最終ラインから巧みにボールを引き出してはワンタッチを交えつつ、長短のパスでゴールへの道をひらいてみせた。一方、守備ではカウンター狙いの相手を攻守が切り替わった瞬間に何度も潰し、ピンチの芽を摘み取った。

 守田のプレーが、5−0という大勝をつかむ大きな要因になったと言っていい。ただ本人は、その出来を手放しで喜んではいない。足りない面もあったと語った。

「新しい試みというか、以前にも3バックをやっていましたけど、攻撃のときに立ち位置を決めたりとか、スタートから3という試みはほぼ初くらいの試合でした。それでもあまりノッキングすることなく、複数得点を取れましたし、全体的にはそういう(=評価できる)内容だったと思います。ただ、もっと立ち位置もそうだし、動き方もそうだし、3で落ちたときにどういうメリットとデメリットがあるかというのをもっと把握しないといけない。相手が強くなればなるほど、そこを共通認識できているかどうかで、大きく展開や結果が変わってくるので。あの相手だとどうしても見えづらいし、良いところばっかり出てくるんですけど、ディテールを見るとそうじゃないよっていうこともちゃんと全員がわかっておく必要あると思う」

 守田が言うディテールとはどういうことなのか。

「最初から6番っぽく真ん中で構えて(旗手)怜央を1個あげて、(鎌田)大地と怜央でちょっと左を流動的に攻撃させて活性化させようというのは3人で話していました。右はどうしても作りの部分で、枚数が足りなくなってしまうのも予想していたことだったんですけど、どうしても、(菅原)由勢だったり(堂安)律みたいな選手に空走りだったり、あんまりボールを触らせてあげられないような時間も特に前半は続いたので、それはちょっとかわいそうだなって。僕がもうちょっとボールホルダーに寄りさえすれば、例えば橋岡(大樹)が持ったときに僕がもう1歩2歩寄れば、相手のボランチが僕に付いてきたはずなので。そうすると、1つ前に入っている大地が逆サイドから受けられる。そういう僕のポジションの気遣いも、ちょっと振り返ったら、もうちょっとできたかなと。
 やっぱり全員がすごくアピールしたいし、得点を取りたいし、数字を残したいので、そこはやっぱり難しいところだなというのは思います。それでも今回、律とかは結構自制してくれていたというか、もっと動きたかっただろうけど、それでも最後に詰めてちゃんと数字を残していた。与えられた役割をわかっている中でなので、そういう選手が少しでも、1人でも増えるともっと良くなるんじゃないかなと思います」

 自身のプレーと選手個々の役割について、ミャンマー戦で感じたことを率直に口にした。その言葉からは守田が考えるチーム向上の道筋がうかがえた。

 カタールW杯以前の取材の中で、守田はチームがより高いレベルに到達するためには「フォーメーションの噛み合わせによって生じるスペースを選手がきっちり把握・共有し、頭の中に同じ絵を描くことが重要」と話したことがあった。その点について、現在のチームは守田の目にどう映っているのか。成長を感じているのか、聞いた。

「僕は、そう思いますね。結構、(選手同士の)会話の内容が濃くなってきたじゃないですけど、ちゃんと想像して頭で理解した上で話せているので。なんか、ちゃんと絵がお互いある中で会話できている感じはします」

 同じ絵が頭の中にあれば、判断のスピードもプレー速度も上がり、当然、精度も向上する。日常的にトレーニングしているクラブチームでなければ難しいと思われがちだが、そうではないと守田はこれまでも繰り返し話していた。実際、ミャンマー戦では旗手、鎌田と試合前からしっかりコミュニケーションを取ることで、ほぼ初めての組み合わせと陣形ながら速いテンポでボールをうまく循環させていた。

セカンドボールを誰が回収するか

 11日のシリア戦に向けても、守田は鋭い指摘をしている。2次予選のラストゲームであり、9月に始まる最終予選前、最後の試合でもある。つまり、チームにとって重要な試合となるが、前回対戦は5−0で勝利を収めているとはいえ、ミャンマー戦よりも難しい戦いになることが予想されている。守田はシリア戦について、中東勢に苦しめられたアジアカップの経験も踏まえたうえで次のように語った。

「(シリア戦は)例えば放り込んでくるような、ミャンマーとは違って結構(戦い方を)はっきりしてくる想定をしています。そのときに人に行きすぎないで、どっかで担保を効かせていかないと危なかったりすると思う。そこは個で上回ればもちろんいいし、結局相手が強くなればなるほど、そこで勝っていかないと勝てないので。ただそこにこだわるのはいいとしても、それは最終的にパッとやれること。そうではなくて追い方も含めて、どこを捨てて、誰が最後フリーマンでセカンド(ボール)を狙うのかとか、その部分だけはっきりしておけば、アジアカップのように、個々で調子が悪かった選手がいても、僕もそうですけど、そういうので結果が左右されてしまうことは少なくなるのかなと思います」

 ロングボール攻撃に対して、出発点を抑え続けるのは難しい。90分間のうち、必ず何本かは自陣深い位置で最終ラインの選手が跳ね返すことになる。その際に重要なのが、誰がセカンドボールを拾うのかという点だ。セオリーではボランチの役目になるが、アジアカップではそこが曖昧になり、ボランチがたびたび最終ラインに吸収されたこともあって、連続攻撃を許すことになった。イラン、イラクに敗れたのは、セカンドボールを相手に拾われ続けたからでもある。

 今度の日本戦に最終予選進出がかかるシリアは当然、アジアカップで中東勢に苦しんだ日本の戦いぶりを研究しているはずだ。先日のミャンマー戦に先発し、75分間プレーした守田が引き続き先発するかどうかはわからないが、守田が語った内容を改めてチームで確認しておくことは重要だろう。

 ピッチ上の役割を整理しておくことがシリア戦のポイント。とくに出発点を抑えられなかった際に、セカンドボールを誰が拾うのか。同じ絵をしっかり描いて、試合に臨むことが求められる。

取材◎佐藤景