21日に行われた北中米ワールドカップ・アジア2次予選、北朝鮮戦で、守田英正と田中碧はボランチコンビを組んだ。二人は距離感を考えながらプレーし、チームをオーガナイズ。そのバランス感覚は、日本代表にバリエーションをもたらすかもしれない。

上写真=田中碧のゴールを祝福する守田英正(写真◎JMPA兼村竜介)

基本、僕が後ろめで碧を好きにやらせた

 北朝鮮でボランチコンビを組んだのは守田英正と田中碧だった。かつて川崎フロンターレでプレーし、幾つものタイトルを獲得した2人だが、当時は4−3−3でプレーするケースが多く、もう一人を加えた3人で中盤を構成したことはあっても、2人でチームの舵取りを担ったことはなかった。日本代表でもまた同じ。3センターハーフを構成したことはあっても2ボランチでプレーすることはなかった。

「ずっとやりたいねと話していた」。守田の説明によれば、いつかボランチコンビを組みたいと田中と話していたという。今回、それが実現したわけだ。

 序盤、田中がボールをピックするために最終ライン近くに下がると、守田はその動きを見ながらするすると前に出た。トップ下の南野が右寄りにポジションを取り、空いたスペースにも進出。相手の最終ラインとMFの間にポジションを取って後方からパスを引き出した。

「僕が6番っぽく後ろに構えて、余裕があれば碧を押し上げて前2枚で、という感じだったんですけど、思ったよりも流動的にビルドアップした方が相手も捕まえづらくて嫌かなと思って」

 状況に応じたプレー選択が奏効し、立ち上がり、日本は北朝鮮を押し込んだ。そしてゴールも記録する。開始2分。決めたのは田中だった。

「役割は本当にざっくり、僕がちょっと後ろ目でスキがあったら前に行くけど、基本的に後ろ目で彼(=田中)を好きにやらせるみたいな。あんまりこうしろって言われたくないタイプなんで、フリーで縦横無尽に動いていいと。それで点を取りましたし、やっぱり彼の特徴ってそれだと思いますし。いい関係性の中で一応、できたのかなと思います」

 田中を生かす形、そして自分が生きる形が守田には見えていた。

「(遠藤)航くんという絶対的なボランチがいるんで、その中で僕自身もポジションを確立してるとは微塵も思っていないし、彼(田中)もそうですし、川村(拓夢)もいるし、ケガをした佐野(海舟)だったり、伊藤敦樹だったり、いろんな選手がいる。僕自身ももっともっとアピールしてポジションを確立しないといけないなと。航くんが一歩リードしているのは事実なんで、(ポジションを)取れたらいいですよね、2人で。これ冗談、冗談ですよ(笑)」

 実際問題、遠藤と守田が組むときとはまた違うプレーが見られた。むろん、対戦相手のレベルにもよるが、この日は田中が縦横に大きく動いたとしても、そのプレーを熟知するがゆえに守田は苦も無くバランスを取っていたと映る。ボールを握る展開を狙うなら二人のボランチコンビは有効だろう。

 一方でよりレベル高い相手との対戦では、やはり遠藤のようにボール奪取から一気に攻撃を加速させられる存在は欠かせないだろう。そのあたりの使い分けを考えつつ、チームを編成していくのも一つの手かもしれない。

「(自身のシュートシーンについて)ああいうところで決めていればもっと楽な試合になったと思うんで、(自分は)田中とは違うのかなと(笑)。まあ、あれはもう、たまたまあいつにこぼれてきただけで僕でも決めましたけど(笑)。ただやっぱり出た試合で目に見える結果を残すっていうのは、本当に選手として大事なこと。彼は本大会でも決めているんで、そういう準備をしているし、もちろん運もありますけど、実力なのかなと思います」

 守田は田中の特長を称えつつ、二人のコンビについて「役割でいうと、(自分の)ポジショニングははっきりしたのかなと思う」とポジティブな面が多かったと話した。守田自身も認めていたが、北朝鮮戦ではビルドアップが常に安定していたとは言いがたく、現時点で二人のコンビが完成しているわけではない。しかしながら、言わずとも互いの考えをピッチで理解し合えるのは大きな強みだ。今後に向けて可能性を感じさせた。

 守田&田中の2ボランチは、日本代表にとって効果的なバリエーションとなるかもしれない。

取材◎佐藤景