日本代表は3日、アジアカップの準々決勝でイランと対戦し、先制しながら後半に2失点して逆転負けを喫した。前半から見えていた問題が後半に決定的なものとなったが、森保一監督は修正を施さず、チームは力負け。優勝候補として臨んだ大会はベスト8に終わった。

劣勢は明らかでも有効な手を打てず

先制点を取るまではよかったが…守田はボランチとしての自身のプレーを反省していた(写真◎AFC)

 ビルドアップの向上は第二期森保体制の主題の一つだったはずだ。しかし、この日はイランの守りの前にボールをつなげず、前進することができなかった。日本のビルドアップがまだまだ望む水準に達していないことを、試合後に守田が指摘している。

「ボールのつなぎ方とか動かし方も、もちろんその選手、ボールを持ってる選手が主導権を握ってて、その選択肢や決定権はその人にあるんですけど、でもチームとしての回し方はこうだよというのはやっぱり決めておかないといけない。どこで誰がどういうミスをするかというのは予期できないし、きょうも(遠藤)航君…そうだな、ビルドアップ、ゴールキックじゃないにしろ、前半から嫌な奪われ方をして真ん中が空洞化した中で奪われてカウンターみたいなこととか、そういうのって正直、初期配置とか二次配置とかがしっかりしていれば、奪われた後も次、何をすべきか、その人自身の役割がはっきりしてるはずなので」

 ボールの動かし方について、その瞬間瞬間で選手個々が判断するのは当然にしても、あらかじめチームとして整理・共有しているものがなければ、出し手と受け手はもちろん、それ以外の選手のプレーや位置取りにも影響を及ぼす。パスの1本目はつながっても2本目はつながらず、守備面でも予測ができずに後手に回る。今回で言えば、それが中盤の空洞化につながった。

 スムーズに前進できない日本は、積年の課題も突きつけられることになった。ロングボールの対応に苦しめられたのだ。40分過ぎからイランは自らの強みを全面に出し始めた。ボランチのエブラヒミが2CBの間に降りて3人でビルドアップするようになり、日本の前線の2人(上田と久保)に対して数的優位な状況をつくって、フリーな選手がロングボールを蹴り始めた。狙われたのは不調の板倉、空中戦が得意ではない毎熊晟矢のいる日本の右サイドだった。

 前半はなんとかしのいだものの、後半も同様に簡単にロングボールを入れられた。遠藤も守田も最終ライン付近まで下がって対応するようになったが、そもそものラインが下がり気味な上にボランチがいるべきポジションにいないため、跳ね返しても中盤でセカンドボールを拾う選手が足らず、連続攻撃を浴びるようになった。

 後半は日本の劣勢は明らかだった。しかし、森保監督は有効な手を打てなかった。不調の板倉を、ハイボールに強い町田浩樹や渡辺剛に代えるか、あるいはCBを1人増やして3バックを編成して中央を固めるか。考えられる手はいくつかあったはずだが、それらを選択することはなかった。

「相手に押されている中で南野(拓実)と三笘(薫)を、推進力を上げるということで投入しましたけど、相手の対策もあって、なかなか推進力を上げられず、押されてしまったというか、滞ってしまったところがある。他にも交代のカードを…守備の部分でも、弾き返せるように、我々には選手がいますので、交代をどうしようかとは思っていましたが、相手が全然、交代カードを切っていない中で、そして時間の推移を見ても、延長の勝負になることも考えました。相手の出方も見ながら、我々がどうやって相手を上回っていくかでカードを切ろうと思っていました」(森保監督)

 55分にモヘビに決められて同点とされた後、67分に前田大然に代えて南野、久保に代えて三笘を投入した。だが指揮官の狙った推進力はもたらされず、前線で相手にプレッシャーもかけられなかった。簡単に蹴られてずるずると最終ラインを下げられ、セカンドのボールの回収もままならずの状態が続いた。状況を改善するカードを切れず、ピッチ内の問題点を最後まで解決できなかったのは、指揮官の責任と言える。