日本代表は31日、ラウンド16でバーレーンを3−1で下し、準々決勝進出を決めた。その試合でまばゆい輝きを放ったのが右サイドバックの毎熊晟矢だ。攻撃では2得点に絡み、粘り強いプレーで守備を支えた。何度も好連係をみせた久保建英も、そのプレーを称賛した。

上写真=先制点につながるシュートなど効果的なプレーでチームに貢献した毎熊晟矢(写真◎Getty Images)

人との距離は常に意識している

 ピッチに躍動感が生まれたのは、右サイドバック、毎熊晟矢の存在があればこそだった。

「相手が前回と違って4バックだったので、攻撃に関してはやりやすいなとは思っていました。立ち位置もそうですけど、破りに行くというのは常に考えてやってました」

 バーレーンは自陣のスペースを消すことに注力するチームではなかった。背後にはスペースがあり、大外のエリアはスライドで守ることを基本としていたが、バラつきもあった。グループステージ第3戦のインドネシア戦で素晴らしいパフォーマンスを披露し、2試合続けて先発することになった右サイドバックは、そこを見逃さなかった。

 24分、久保建英とスイッチするようにボックス付近でボールを受け取り、クロスを供給。その1分後には遠藤航からのスルーパスに合わせて相手4バックの脇にタイミングよく飛び出してゴール前にボールを送った。

 いずれもDFに当ててしまったのだが、毎熊のスペースを見つけ出す感覚の鋭さと走り込むタイミングの良さを感じさせるプレーだった。

 そして試合の流れを引き寄せんとした思い切りの良いプレーが、ゴールに結びつく。31分だった。

 左CBの冨安健洋がボールを前に運び、左の中村敬斗に展開。中村は内側にドリブルを仕掛ける素振りをしてボールサイドに寄ってきた遠藤にパスを出した。この時点で相手の陣形は、日本の左サイドに寄っていた。

 逆サイドで久保がライン際にポジションを取っていたため、相手最終ラインの間隔は広がっていた。その状況の中で上田綺世が飛び出す動きを見せ、ラインを押し下げる。ぽっかり空いたバイタルエリアに進入したのが、毎熊だ。遠藤からのパスを受けると、迷わず右足を振った。

 シュートは左ポストを直撃。そのこぼれ球を誰よりも早く反応した堂安律が拾ってゴールに蹴り込んだ。見事な連動の中で決まったゴールだったが、毎熊が躊躇なくシュートを選択したことが重要だった。

「プレーしてて相手にシュートを打たれた後に、モニターに1−0って出てたんで、(日本は)シュートを打ててないんだなと。結構、押し込んでいたけどシュート打ててないんだと感じたので。そのときに相手もうしろに重かったですし、自分が中のスペースで(パスを)受けたら打とうかなと思っていました。そう考えて入っていったら点につなががったのでよかったです」

 試合の展開を見ながら、チームを勢いづける意味でもシュートを打とうと決めていた。結果、得点という最高の形でチームを乗せることになった。

 その後も毎熊のプレーは大きな実りをもたらしていった。状況を見ながら内側、外側とコースを変えて駆け上がって攻撃に厚みを加え、組み立ての局面ではアンカー気味になる遠藤の横に付いて積極的にパスを受けた。

「人との距離感というのは常に意識してますし、自分が外にいると人と人がつながらないと思ったので、そこをつなげるために、あそこにポジション取りました。遠藤選手にもパスの選択肢が増えると思うので。そこは、ここ(=代表)にくる前から意識してやっていました」

 昨年9月に代表デビューを飾ったばかりだが、すでにチームを循環させる重要な役割を担う。前線の選手たちとの「呼吸」もいい。

「技術力がありますし、個でも何でもできる選手たちなので。まずは簡単に預けて、そこからもう一度ポジション取り直すというのは意識しています」

 そんな毎熊のプレーについて、前線の選手たちも称賛を惜しまない。試合中に何度も連動した久保の毎熊評は、こうだ。

「毎熊選手が合わせてくれていると思う。僕はわがままなタイプだし、堂安選手も見てわかるようにわがままなタイプので、それに毎熊選手がうまく合わせていると思いますね。今日は本当にボールタッチもいいし、安定してますよね。今日の試合は彼がMVPなのかなと思います。
 よく海外組だとか国内組だって言いますけど、彼みたいな選手がこうやってプレーすることで、どこでやってるかじゃなくて、何をやるかっていうのが日本代表に選ばれるために大事なんだよということを、日本でやっている選手にも他の国でやってる選手にも示せたと思います。彼がいい選手なのは、サッカーを知っているなら知っているほどわかると思う。基本的に(自分は)やりにくい選手とかいないですし、前のポジション争いにフォーカスされがちですけど、両サイドバックもいま非常にし烈なのかなと思いますね」

 毎熊は仲間にプレーしやすい状況をつくり出すと同時に、刺激も与えている。

「1点目に関しては堂安選手がよく詰めていただけですし、3点目も上田(綺世)選手の個人技で、僕のパスはいいパスではなかったので。前半の立ち上がりからペナルティエリアにフリーで入っていくシーンはありましたけど、最後のクオリティーが低いなというのは感じていました。そこに入った時に、どれだけクオリティーを出せるかが今後も大事になってくるかなと思います」

 本人は謙虚に語るが、久保の指摘通りMVP級の活躍を見せた。

 毎熊晟矢は今、代表でプレーするたびに、その存在感を増している。

取材◎佐藤景