日本代表は19日、アジアカップのグループステージ第2戦に臨み、イラクに1−2で敗れた。森保一監督は「反省しなければいけない」と前を見たが、ここではその反省すべき内容の一つ、クロスからの2つの失点について考える。日本は何が足らずに相手に2ゴールを献上したのか。

2失点目は前半のアディショナルタイム

 2失点目は前半のアディショナルタイムだった(45+3分)。1失点目と同じく右サイドを破られてしまう。

 相手のゴールキックをいったんは弾き返し、ボールはハーフウェーラインを越えたものの、フランス・プトロスに蹴り返される。ボールは再び日本陣内の右サイドで落下。菅原が回収しようとポジションを移動した。だが、ユセフ・アミンにバスケットのスクリーンのように体を入れられてブロックされ、ヤヒヤに入れ替われる形で背後に抜け出された。

 虚を突かれた日本の選手たちが一斉に帰陣する。しかりヤヒヤに正確なクロスをあげられ、最後は再び飛び込んだメイマンにヘディングを叩き込まれた。ヤヒヤが裏に出た瞬間、ボールがサイドラインを割ったかのようにも見えたが、プレーは続行。結果、菅原は置き去りにされ、チームとして警戒していたはずのクロスをいい形で入れられることになった。

 ゴール前でメイマンとの駆け引きについて、中に絞って対応した左サイドバックの伊藤洋輝が振り返る。

「(メイマンを)見ていたんですけど、僕の背中に逃げたので。そっちに行ったのはわかったんですけど、パワーを持って入ってこられた。もう一歩前に反応できれば(ボールに)触れたんですけど、そこの差でやられた」

 クロスの瞬間、トップ下のジャシムがニアに走ってDFを釣り、メイマンはやや遅れて守田と伊藤洋の間に入り込んだ。日本のゴール前に人数は足りていたものの、あれだけ深い位置まで運ばれると、戻りながら守る側はボールにフォーカスせざるを得ない。1失点目の記憶もあってポケットに進入された際に日本の守備陣がボールサイドに寄っていた。そして守田と伊藤洋はメイマンを間接視野でとらえながらも、一瞬の動きで視野の外へと逃げられ、ゴールを決められた。

「最後はボールであり、人なんで。最初にスペースを埋めて、なるべくバランスを保つ、ボックス付近を固めるっていうのは間違いないんですけど、最終的には1失点目の僕が競り切れない部分もそうですし、2点目の洋輝が前に入られてしまうのもそうですし、あれは正直二つとも簡単じゃないんですけど、結局でも最後に決められる、勝敗を分けるのはああいう細かい部分。その前にクロスをフリーで上げさせないとか、そういったところは振り返るべきポイントではあるんですけど、最終的にやっぱり人に強く行けるかどうかなので。そこは次につなげるポイントだと思います」

 守田英正は、人に強くいけなかったことを失点の要因の一つとしてを挙げた。確かに試合開始直後から日本がデュエルで負ける場面が散見。本来、ベースとなるべき戦いの部分で劣勢だったことが、ひいては試合全体の悪い流れにつながった。

 初戦のベトナム戦でも同じだが、デュエルの部分で日本が劣勢になる場面が目立つ。優勝候補に一泡吹かせてやろうと相手が高いモチベーションを持ち、激しく闘志を燃やして向かってくる中で、日本は受けて立つような戦いぶりになってしまった。そのあたりは十分に注意を払ってきたはずだが、戦いぶりが受け身と映る。

 1年あまり前、ところも同じカタールで臨んだワールドカップでは日本が今大会のベトナムやイラクだった。全く負けるなどと思っていない格上国に向かっていく立場だった。結果はどうだったか。日本は強豪国で優勝候補だったドイツとスペインを撃破した。果たしてアジアの頂点を争う大会に臨んでいる日本はベトナムに苦戦し、イラクには敗れた(遠藤航の終盤のゴールで最終スコアは1−2)。

「もしかしたら僕たちがボールを支配する状況になるかもしれないですけど、それでも不用意な連続したミスから失点につながる。そうするとすごく試合展開が難しくなったり、そういうのは考えられるし、逆にというか、僕らがドイツを相手にW杯でやったような展開もあり得るので、しっかりまずは自分たちのできることにしっかりフォーカスして、まずは先制点というところ、そういう初歩的なところというか、やるべきことをしっかりやることが一番大事になってくると思います」

 大会初戦を迎える前、南野拓実はこう言って気を引き締めていたが、その思いとは裏腹な結果が第2戦で起きてしまった。

「完全アウェーの雰囲気を作られた中で追う展開になったのが非常に痛かったと思います。前半のスタート、前半終了間際に失点して、特に2点目の部分で、より難しい展開になってしまった。(試合の)入りと前半、後半も含めて締めところをどうやって戦っていくかは、しっかり反省して修正しなければいけない。選手もスタッフも最大限努力してくれている中、監督として勝利に導くことができず、戦い方の部分もしっかり反省したい。ただ大会は終わっていませんので、これから第3戦、そしてその先につなげていけるように、まずは第3戦に勝利できるように、この2戦を生かせるようにしていきたい」(森保一監督)

 どんな強豪国も敗れることがある。つけ入るスキがある。カタールW杯において、日本はそのことを身を持って証明したはずだった。それと同時に受け身になりアグレッシブさを失えば、下馬評など簡単に覆ることも知ったはずだった。

 デュエルで劣勢になり、ロングボールを簡単に許し、クロス対応で人をつかまえられず、後手後手に回って失点を重ねた。

 イラクに敗れ、日本のグループ1位通過はなくなった。2位で抜ければ、ラウンド16でいきなり韓国と激突するかもしれない。「アジアカップに簡単な試合はない」とは森保一監督の言葉。日本は自ら導いた結果によって険しい道を進むことになった。行き着く先がアジアの頂点なら、それも意味のあるものとできるがーー。

取材・文◎佐藤景