日本代表は初戦のベトナム戦でサイド攻撃がほとんど機能しなかった。左サイドバックの伊藤洋輝や右サイドハーフの伊東純也からクロスが送られたが、枠内シュートには持ち込めず。ピッチ内でどんな問題を抱えていたのか。守田英正によれば「幅がなかった」ことが最大の問題だった。

上写真=配球が難しかったと語った守田英正(写真◎AFC)

何か逃げながらセットすることが多かった

 AFCのスタッツでベトナム戦のデータを確認すると、日本の枠内シュートにつながったクロスの数はゼロだった。相手の最終ラインが5枚で構成されていたこともあり、かつ巧みにスペースを消していたこともあり、狙いであるサイド攻撃が封じられてしまった。AFCのデータと断ったうえで、その結果について守田に考えを聞いた。

「いやもう圧倒的に前回の試合で言うと幅がなかったなって。高い位置で時間を作るようなポイントがそもそもなかったので、サイドハーフが中に絞りすぎたり、その分サイドバック上がればよかったんですけど、そのタイミングを逃してしまったりとか、シンプルに幅がないことによってクロスを上げるっていう選択肢がなかった。細かくつないで何か逃げながら(攻撃を)セットすることが多かったのかなという感じですね」

 サイドからゴールへのルートを作れなかったこともあり、日本は結果として中央に活路をみいだす。南野拓実の2点目や上田綺世のゴールが象徴的だ。シュートにつながったキーパスの数は守田の3回が最も多い数字。サイドがだめなら中で勝負するという考えは、何ら悪くない。しかし、守田は反省を込めて語った。

「もっとサイドに振って散らして、まずはゲームコントロールすることを意識したかったんですけど、結局、外への振り幅が少ないんで、スキを見て縦パスを入れたりとか、背後にボールを配給するしか、むしろやることなかったというか。僕としてもなかなか難しかったのは確かですね」

 攻撃する際には常に幅と深さを意識する。ただ、ベトナム戦では幅のある攻撃ができなかったため、中央の狭いエリアの中で前進を試みるしかなかった。日本が採用した4−2−3−1のシステムの場合、通常サイドハーフか、サイドバックのどちらかが幅を生み出すことになる。だが前半は、右も左もそのバランスがうまく取れなかった。

 チームは昨年3月以降、トレーニングの中で必ずサイドのローテションを磨くメニューに取り組み、崩しのパターンの習得に時間を費やしてきた。だが、ベトナム戦ではそもそもサイドにいい形でボールが渡らず、磨いてきたサイド攻撃も不発に終わった。

 2ボランチとトップ下の正三角形を、アンカーと2インサイドハーフの二等辺三角形に変えた後半は守備がハマり始め、それに伴って攻めでも複数人が絡む形でサイドへとボールが送られた。しかし伊東純也のいる右でつくって、中村敬斗で仕留めるようなチームとして意図していた攻撃は実践できず。伊東が左に回っていた63分にその伊東からのパスを受け、ボックス内に進出した守田がシュートを放った場面もあったが、DFに阻まれてネットを揺らすことはできなかった。

 19日に対戦するイラクは4バックも3バック(5バック)も併用するチーム。当然、ベトナム戦で苦しんだ日本の戦いぶりについて研究しているだろう。仮にベトナム同様、横幅を埋める配列で相手が臨んできたら、どう対応していくか。

「どの試合においても、ボランチはキーになる。自分ところでもうちょっとゲームコントロールできればいいかなと思います」

 攻め筋はいくつもあり、サイドからの崩しがすべてではないが、ベトナム戦でほとんどできなかった効果的なサイド攻撃がイラク戦のポイントになるかもしれない。

取材・文◎佐藤景