上写真=84分に出場し、85分の上田綺世の得点をアシストした久保建英(写真◎Getty Images)
出場するやゴールに絡む
久保建英がピッチに登場したのは、84分。その1分後にゴールに絡んだ。
ピッチ中央で遠藤航が送った縦パスを堂安律が受け、さらに久保がボールを引き取って、左前方にいた上田につなぐ。相手を十分に引きつけてパスを出したあともしっかりDFを釣って、上田のシュートスペースを作り出した。
「結構タフな展開で前半のうちからアップして後半から行くって言われてたんですけど、2点が入ったことで『今じゃないな』っていうチョイスになって。僕は出ても30分ぐらいの予定だったので、そういったところでは難しい心の準備もありました。『今日は出ないかなあ』と思っていて、それでもしっかり準備していたから、まあ結果、良いゲームになってよかったなと」
展開が刻一刻と変わる中、久保も状況に応じて準備を進めていった。そして終盤に登場し、ダメ押し点に絡む。その結果、日本は4−2で勝利。出場時間が短いながらも白星スタートにしっかり貢献した。
ハーフタイムで修正を施したことで後半開始から日本は主導権を握ったが、前半は逆転にこそ成功したものの、内容的には劣勢の時間も長かった。大半がベトナムペースで進んだと言っていい。久保も、ベトナムのプレーぶりを称えた。
「正直、今日の試合は今、横にいますけど(ミックスゾーンで隣にいた)、トルシエ監督に僕たちがやろうとしてることをやられちゃったというか、相手の嫌なことをやって、自分たちのペースでゲームを運ぶということを前半はやられていたと思う。後半、ハーフタイムで修正できたので良かったですけど、前半のうちに、ああいったところは修正していかないといけないなと。どこがどうと、今ここで言わないですけど、結構(選手が)余ってる部分もありましたし、彼らの何て言うんでしょうね、この試合にかける意気込みというものを見せられつつ、気持ちだけじゃなくてしっかり戦術もあった。僕はちょっとベンチで見てて、びっくりじゃないですけど、すごい圧倒された感じがありました」
久保が注目したのは、とくにビルドアップだ。
「元々、繋ぐチームなのはわかってたし、カウンターというよりはサイドの裏の奥を狙ったりとか、すごい良いサッカーをしてくるチームなのもわかっていました。でも、おごりじゃないですけど、僕たちのほうがやれるという自負があった中で、想定を上回られたというか。ポゼッションでボールをつなぐことに懸けていて、フォーメーションをバラしてでもつないでくる。結局あれで逆につながれたからといってピンチを迎えるわけじゃないんですけど、その結果、(日本が)ズルズル下げさせられて、ボールを取れないシーンがあった。すごい面白いサッカーだなと」
決してリスペクトを欠いていたわけではないが、前半の戦いぶりは久保の想像を超えていた。ベトナムのサッカーに改めて敬意を評した。
「本当にポゼッションがしっかりしていて、あとは練習しているのかわからないですけど、中に入ってくるときのワンタッチがうまいなと。ワンタッチ目の置きどころがうまいから、余裕を持って日本のプレッシャーにも耐えられるし、失わないと思ってるからああいうプレーができるわけで。見てみたいですね、どんな練習をしてるのか。そのぐらい完成度が高く、多分、アジアで僕たちとどっちがポゼッションが上かといったら、結局前半は上回れましたし、万全な僕たちだったらどっちが上かわからないですけど、1、2を争うと思います」
想定外のことが起こるのがアジアカップ。しかし、日本は勝ちきった。
「こういう内容でも勝つのが強いチームなので。そこはポジティブな要素として挙げられるのかなと」
次戦は19日。イラクと対戦する。
「コンディションも上がってきて、中4日あるので次はしっかり、もっと長い時間出ると思う。今日は10分でしたけど、次がもっともっと結果も求めながら、とくに内容の部分を意識していきたいなと思っています」
冷静に戦況を分析し、出場するや結果も出した。久保の出場時間が長くなることはチームにとって間違いなく大きなプラスだ。
取材◎佐藤景