サッカー日本代表は21日、サウジアラビア・ジッダで『2026年北中米W杯アジア2次予選』のシリア代表戦に臨む。シリアは初戦の北朝鮮に1−0の勝利を飾っており、日本に勝てば、グループ首位に立つ。クーペル監督のもとでタレントがそろい、決して侮れない相手だ。

上写真=シリア代表はアジア2次予選の初戦・北朝鮮戦で1−0の勝利を飾っている(写真◎Getty Images)

2トップのWオマルに注意せよ!

 10月26日に発表された最新のFIFAランキングでは日本代表が18位だったのに対し、シリア代表は92位で、2次予選のグループBでは4ヶ国中2番手につけている。中立国サウジアラビアでの試合開催とはいえシリア代表には中東という地の利があり、日本代表にとっては厳しいアウェーゲームとなりそうだ。

 両国は過去に6度対戦しており、日本代表が5勝を挙げている。直近の対戦は2017年6月の国際親善試合で、結果は1-1のドローだった。シリア代表は日本代表に一度も勝ったことはないが、決して侮れない実力を備えていると言えよう。

 現地16日にジッダで行われた2次予選の初戦では、北朝鮮代表に1―0で勝利。大阪からサウジアラビアへ移動した日本代表と違ってシリア代表には移動がなく、万全の状態で連勝を狙ってくる。

 そんなチームを率いるのは、アルゼンチン出身のエクトル・クーペル監督だ。過去にエジプト代表を28年ぶりのW杯出場に導き、インテルやバレンシア、ウズベキスタン代表、コンゴ民主共和国代表など世界各地での指導歴を持つ68歳の老将は今年2月にシリア代表監督を任された。

 北朝鮮戦でのシステムは4-4-2で、シンプルに2トップの個の力を生かす攻撃が印象的だった。前線にそびえたつツインタワー、オマル・フリビンとオマル・アル・ソマーには日本代表も特に警戒しなければならないだろう。

 ともに長くシリア国外でプレーし、29歳のフリビンは現在UAE1部のアル・ワフダに、34歳のアル・ソマーはカタール1部のアル・アラビに所属している。そして、シリア代表での得点数は2人合わせて「40」を超えており、実力でも実績でも現体制では群を抜いている。

 北朝鮮戦では2人そろって先発出場し、69分にはGKからのロングボール1本と“Wオマル”のパス交換だけでビッグチャンスを作り出した。身長184センチのフリビンと身長192センチのアル・ソマーは空中戦にも強く、前線での起点作りに長けている。日本代表にとっては彼らをいかに封じ込めるかが勝利の鍵の1つとなりそうだ。

 “Wオマル”に次ぐストライカーとして身長180cmのマルディク・マルディキアンも存在感を増しており、彼ら3人のうち2人が先発メンバーに名を連ねるはず。ならば、前線からの激しいプレッシングで2トップへのロングボール供給源を絶ちたい。一度大きく展開されてしまうと、両ウィングや両サイドバックも積極的に絡んできてしまう。

 一方で、日本代表の攻撃時にはサイドバックの背後を狙うべきだ。シリア代表の両サイドバックは前への意識が強く、守備の際も目の前の相手に釣られがちになる。その特徴を逆手に取って、サムライブルーの武器であるウィングの個のクオリティで上回っていけば、多くのチャンスを生み出せるのではないだろうか。

 もう1つ注目したいのは、クーペル監督の母国でもあるアルゼンチンから帰化した選手たちである。これまでシリア代表には同国にルーツを持つ北欧出身の選手が多く招集されてきたが、新指揮官の影響か今年10月に2人のアルゼンチン出身選手が初選出された。

 祖父母がシリアとレバノンにルーツを持つイブラヒム・へサルはアルゼンチン1部のベルグラーノに所属するアタッカーで、今月16日の北朝鮮戦に途中出場してシリア代表デビューを飾った。公開されている情報だと右利きだが、左サイドを主戦場とし、左足でのパスやシュートの威力が目立つ。大柄な体格とパワーを活かした豪快な縦突破が大きな魅力で、時折ラボーナでクロスを上げるなど意外性も兼ね備える。ちなみにテレビゲームの情報だと身長183センチ・体重70キロだが、一説によれば実際の体重は85キロらしい。確かに見た目はかなりゴツい。

 また、北朝鮮戦にボランチとして先発出場したエセキエル・ハムはアルゼンチン2部のインデペンディエンテ・リバダビアに所属している。2018年には名門アルヘンティノス・ジュニオルスからの期限付き移籍で当時J2のFC岐阜に在籍した経験もある元Jリーガーだ。岐阜時代には、のちに日本代表へと駆け上がっていく古橋亨梧ともチームメイトだった。

 ハムは正確なキックとゲームメイク力が武器のセントラルMFで、所属クラブではフリーキックやコーナーキックからアシストを量産している。今年のアルゼンチン2部リーグ開幕戦では、横に鋭くスライスする直接フリーキックでゴールも挙げた。右足から繰り出す精度の高いサイドチェンジのロングパスは、シリア代表の戦術ともマッチする。

 アルゼンチン出身のへサルとハムがシリア代表にもたらす個のクオリティは、今のところチーム力向上に寄与しているように見える。前線の“Wオマル”に対するチャンスメイクを防ぐ意味でも、彼らを警戒しておいて損はないだろう。

 日本代表とシリア代表が開幕連勝をかけて対戦する北中米W杯アジア2次予選のグループB第2節は、現地21日の17時45分(日本時間21日23時45分)キックオフ予定だ。

文◎舩木渉