12日に日本代表と対戦するトルコ代表とはどんなチームなのか。ここでは主力や現状をリポートする。日本の印象について前日会見に出席したイスマイル・ユクセクは「ドイツのような大国に個性を発揮していた」と称賛し、「自分たちの力を試す貴重な機会になる」と日本戦を位置付けた。

上写真=前日会見に出席したシュテファン・クンツ監督とイスマイル・ユルマズ(写真◎Getty Images)

チャルハノールとコクチュの両インサイドは要警戒

 日本代表に1-4で敗れた翌10日、ドイツ代表のハンジ・フリック監督の解任が発表された。グループステージ敗退に終わった昨年のカタールワールドカップが終わった後も結果を残せず、「これ以上の進歩はない」と見限られた指揮官は合宿中にチームを去るという不名誉な形で職を失った。

 立場が危うい代表監督は、どうやらフリックだけではない。日本代表が12日に対戦するトルコ代表もシュテファン・クンツ監督も8日に行われたEURO2024予選のアルメニア代表戦に1-1で引き分けた後、トルコサッカー連盟から辞任を求められたと報じられている。

 とはいえ、トルコ代表は現時点で十分にEURO本戦出場の可能性を残している。暫定ではあるもののグループ首位に立ち、残り3試合の結果によって予選突破の2位以内を自力で確定させられる状況だ。
 クンツ監督は日本代表の森保一監督と同じく3バックと4バックを併用しながらチーム強化を進めてきた。今年に入ってからは4-1-4-1をメイン布陣とし、5試合を戦って3勝1分1敗とまずまずの成績を残している。敗れたのは3月のクロアチア代表戦だけだった。

 10月以降のEURO予選に向けて弾みをつけるためにも、日韓ワールドカップの決勝トーナメント1回戦以来21年ぶりとなる日本代表戦は重要な意味を持つ。「エース不在」という課題に向き合うトルコ代表にとって貴重なテストな機会にもなるだろう。

 今年5月下旬、ヘタフェに所属するエネス・ウナルが右ひざ前十字靭帯断裂という重傷を負ってしまった。ブラク・ユルマズやジェンク・トスンの跡を継ぐ新エースストライカーとして期待され、トルコ代表の1トップに定着しつつあった長身FWの離脱は大きすぎる痛手だった。

 直近のアルメニア代表戦と6月のウェールズ代表戦に先発起用された23歳のバリス・ユルマズは、所属するガラタサライで控えに甘んじている。今年3月にA代表デビューを飾って4キャップを刻んでいるウムト・ナイルはすでに30歳で、今季加入したフェネルバフチェで定位置を確保できないまま負傷離脱してしまった。FWに代表クラスの外国籍選手を起用しがちなトルコ国内リーグでは、自国出身のストライカーが育ちづらい状況になってしまっている。

 一方、今夏ハタイスポルからフランス1部のレンヌに移籍したベルトゥグ・イルディリムは8日のアルメニア代表戦でA代表デビューを飾り、起死回生の同点ゴールを決めた。とはいえ実績が乏しい21歳のFWに今すぐエースとしての信頼を置けるかどうかは不透明。他にも今夏ブレントフォードからガラタサライへ移籍したハリル・デルヴィソールなどの候補はいるが、やはりいずれも決め手に欠け、エネス・ウナルの代役探しは困難を極めそうである。

 なお、アルメニア代表戦を終えて日本代表戦に向けてキャンプ地のオランダへ移動したトルコ代表からはケレム・アクトゥルコールとアブドゥルケリム・バルダクチュが離脱している。特に前者は左サイドで崩しの鍵を握る存在だった。

 今のトルコ代表にとって最大の武器は、ビルドアップからフィニッシュまであらゆる局面で違いを作れるハカン・チャルハノールとオルクン・コクチュの両インサイドハーフだ。彼らを引き立てて攻撃を加速させる1トップや左ウィングに、日本代表戦で誰が起用されるか。そして、クンツ監督は自らの手腕でエース不在&解任危機という難局を乗り切ることができるのか注目したい。

文◎舩木渉