上写真=ドイツ代表の新キャプテンに就任したイルカイ・ギュンドアン(写真◎Getty Images)
迷走し、2023年は1勝1分3敗
ドイツ代表は、2大会連続となるグループステージ敗退に終わったカタールワールドカップの悪夢から抜け出せずにいる。
今年に入ってからすでに5試合をこなしているが、成績は1勝1分3敗。勝てたのは3月に対戦したペルー代表だけで、6月シリーズは1分2敗と厳しい現実を突きつけられた。
その6月シリーズの3試合で、ハンジ・フリック監督は3バックをテストしている。ただ、ディフェンスラインの組み合わせは毎試合変わり、確固たる成果を見出せないまま失点を重ねた。
極めつけは3試合目のコロンビア代表戦だった。スタメンに基づいて作成される予想フォーメーションでは4-2-3-1だったが、蓋を開けてみればボランチに入ると見られていたエムレ・ジャンが3バックの右に配置された3-4-2-1に。すると54分、ジャンの自陣でのボールロストから失点が生まれてしまう。
さらに79分にはジョシュア・キミッヒが相手のクロスをブロックした際にペナルティエリア内で軽率なハンドを犯してPK献上。これをフアン・クアドラードに決められ、カタールワールドカップ出場国ですらないコロンビア代表に0-2で敗れた。
なぜここまで低迷してしまっているのか。要因の1つとして考えられるのは、人材の偏りだ。現在のドイツ代表は2列目のアタッカーにワールドクラスのタレントがひしめいているものの、サイドバックやセンターFWに一線級の選手がいない。3バックのテストはサイドバックの人材難を、カイ・ハヴヴェルツのセンターFW起用は得点力不足を象徴していると言えるだろう。
そして、試合を見ていて感じる低迷のもう1つの原因は、各々の責任感の欠如である。攻守の切り替えが緩慢で、ボールを持っている選手へのサポートは乏しく、せっかくのチャンスシーンでもリスクを冒してゴール前に飛び込んでいく人数が足りていない。何としてもゴールを奪ってやろうという気迫に欠け、軽率なミスで相手にやすやすと主導権を渡してしまう。指揮官やチーム全体の迷いが個々のパフォーマンスの機微に深刻な影響をもたらしているのではないだろうか。
ただ、今回の日本代表戦は彼らにとってこれまでとは意味合いの異なる試合になる。地元ドイツメディアによれば、イルカイ・ギュンドアンは「チームとしてすぐに成果を生み出さなければならないのは明らかで、これ以上の失態は許されない」と語ったという。ワールドカップから1年経たず、日本代表に連敗するようなことはあってはならないという意識でリベンジマッチに挑んでくるはずだ。
ドイツ代表は日本代表戦に向けてU-20ドイツ代表と練習試合を行い、キミッヒを右サイドバックに据える4-3-3のフォーメーションをテストしたと複数のドイツメディアが報じている。結果が出なかった3バックを諦め、新たな布陣に切り替えるようだ。
カタールワールドカップで日本代表にとって大きな脅威となったジャマル・ムシアラの欠場は決まってしまったが、攻撃陣には高いクオリティを備えた選手たちが揃っている。ホームのサポーターの前で背水の陣に臨むドイツ代表の底力は計り知れない。
文◎舩木渉