カタールW杯のドイツ戦で決勝点を挙げた浅野拓磨が現地4日、日本代表の欧州遠征初日のトレーニングを終えて取材に応じた。代表合流前の試合で2得点を挙げ、ドイツメディアからの注目度がさらにアップしたFWは、「前回の対戦を忘れ、チャレンジャーで臨む」ことが重要と話した。

上写真=日本代表欧州遠征、初日のトレーニングに臨んだ浅野拓磨(写真◎サッカーマガジン)

代表はやっぱり刺激をもらえる場所

「代表合流する前にやっぱり結果を残したいって強く思ってたので、それができたことはいい状態で、代表に臨めるかなと思います」

 ボーフムに所属する浅野は、代表合流直前の2日、アウェーのアウクスブルク戦に先発出場。2トップの一角を務め、前半のアディショナルタイムにまず同点弾をスコアする。相手のクリアを拾ったホフマンのパスに反応し、ボックス内で右足を合わせてネットを揺らした。再び相手にリードを許した後、シューテガーの浮き球パスに反応。ライン裏に抜群のタイミングで飛び出すと右足ダイレクトでボールをとらえてゲームを振り出しに戻した。

 浅野がアウクスブルク戦で決めた2ゴールはいずれもファインゴール。好調ぶりを示したが、浅野の好調はドイツ側にしてみれば心配の種だろう。ともすればカタールW杯の悪夢が蘇ったかもしれない。名手ノイアーのニアサイドを打ち抜き、ドイツ代表を2−1と逆転したあのゴールである。

 実際、浅野は「前回、ワールドカップで勝利して、ドイツのメディアにも今回のドイツ戦はどうだって聞かれます」と話した。しかし、本人はいたって冷静だ。

「僕としては全く前のドイツ戦は忘れたと言ってもいいぐらい、あんまり考えてないです。同じような戦いができるかどうかもわからないぐらい、全く違う試合になるんじゃないのかなと思います」

 前回と今回はシチュエーションが違う。メンバーも全く同じではない。何よりドイツのホームであり、リベンジの意味もあって相手は絶対に負けられない。「間違いなくドイツは日本よりも個の部分でもチームとしてもレベルが高いチームだと思う」。だからこそ「100パーセントのチャレンジャーで臨まないと勝利することはできない」と浅野は気を引き締める。

 むろん、ワールドカップの舞台で勝利したことは自信になっており、海外組が増え、所属クラブで主力を担う選手も増えた今、日本が「恐れることは何もない」が、自信と慢心は違う。浅野は「100パーセント、チャレンジャーで臨まないと勝利することはできない」と強調した。

 そして自分自身についても、好調だからといって安心してはいられないという。

「代表合流前に結果を残して合流できるなと、ちょっと一安心というかほっとした気もありましたけど、携帯を開いてニュースを見ると、同じタイミングにたくさんの代表選手が結果を残してて、『いや、安心してる暇なんて一瞬もないな』と。その時点で自分にとっては刺激になっていますし、まだまだやらないとなと思えています。それは代表に合流できないと味わえない気持ちだと思うし、(代表は)やっぱりいいところだなと改めて思いました。来るたびに、自分が成長するために何が必要なんだって考えさせられる」

 W杯で結果を残し、自信を携え、クラブで結果を出し、しかし慢心することなく代表のライバルたちに刺激を受けて、さらなる成長を目指す。そのサイクルが浅野を前進させている。

「代表活動は、内容の成長っていうのも本当に大事になってくると思いますけど、何よりも毎招集、毎招集、競争でもあると思うので、そこで生き残っていくために自分がやれることをやるだけだと思っています」

 5日後のドイツ戦に向け、準備は万端。どんな形であれ、浅野は「100パーセントの力で」チームの勝利に貢献する覚悟でいる。

取材◎佐藤 景