谷口彰悟がJリーグの代表として世界に挑んだカタール・ワールドカップ。2試合にフル出場して、日本のピッチで見せる実力そのままを披露して、ベスト16入りに大きく貢献した。だからこそ再確認した、個の成長の必要性。もっと強くなるために、まだ歩みを止めるつもりはない。

上写真=谷口彰悟は世界でJリーグの価値も示した(写真◎Getty Images)

■谷口彰悟カタール・ワールドカップ出場記録
・11月23日 グループE第1戦/○2-1ドイツ=出場なし
・11月27日 グループE第2戦/●0-1コスタリカ=出場なし
・12月1日 グループE第3戦/○2-1スペイン=フル出場
・12月5日 ラウンド16/▲1-1(PK1-3)クロアチア=フル出場

「もっと強くなりたい」

 谷口彰悟は十分に日本の価値を示した。しかも、Jリーグのそれを。

 カタール・ワールドカップのメンバー26人の中で、国内のクラブのみでプロキャリアを積み上げてきた4人のうちの一人。川崎フロンターレの不動のセンターバックでありキャプテンが、世界で勇躍した。

 ワールドカップデビューはグループステージ第3戦。突破がかかるスペイン戦で日本は初めてキックオフから3-4-2-1システムを採用する。その3バックで左に入り、右の板倉滉、中央の吉田麻也と堅陣を築いた。

 そのスペイン戦のあと、吉田が谷口を賞賛した。

「例えば彰悟だって、チャンスがなかなかない中で、こうやって与えられたチャンスでしっかりと結果を出すのは、やっぱり準備の賜物だと思う」

 最初の2試合ではベンチを温め、勝負の3戦目で持てる力をピッチに投影する。「全員戦力」を象徴的に示す一人だった。続くクロアチア戦も先発し、延長戦まで120分間、戦い抜いた。

「いったん、代表をあきらめそうになったことは事実だし、僕には縁がないのかなと思っていた場所でした。それでもやっぱりあきらめきれなかったし、それがやっぱり代表という存在だと思うので。あきらめずに目指してコツコツとやり続けて良かったなというのは素直に感じます。準備という意味でもしっかり戦える手応えは得たので、そういう意味でも大きく間違ってはいなかったと思っています」

 2017年以降、代表から遠ざかった。だが、J1でチャンピオンになるなど、日本のトップランナーであり続け、21年から再び代表に戻ってきた。やはり、あきらめてはいけないのだ。

 今回の大会は守備に軸足を置く戦いが功を奏した。次のステップは、より攻撃の主導権を握ることだと多くの選手が口にしている。谷口はもともと、最終ラインから機を見て持ち上がったり、チャンスにつながるパスを得意とする攻撃センスにも優れたセンターバックだ。ただし、攻撃フェーズへと移るために、谷口が自分に求めるのは守備力なのだ。しかも、圧倒的な。

「相手のフォワードに対して1対1を怖れないというか、何ならで同数で守り切る、逆に言えば、数的不利くらいでも大丈夫だよというところまで持っていけると、より攻撃に枚数を使えると思います」

 5-4-1の配置で構えて守ってから逆襲する戦法でドイツにもスペインにも勝ち、クロアチアには120分ではドローだった。世界のトップクラスに人数をかけて守ることができるのは収穫で進歩だ。そこで改めて得た悟りが、個人で守りきることこそが、攻撃の大きな助けになるという事実である。

「決勝トーナメントでは得点を取らないと勝ち進めません。我慢強く戦うということに今回すごく手応えを得たし、非常に良い戦い方だと思っていて、もちろんそこに対する不満は何もありません。ただ、得点を取るということにフォーカスすると、後ろに人数を置くよりは前に人数をかけるべきだと思っているので、そういった意味では後ろがしっかり1対1を守りきれる、人数を置かなくてもしっかり守れるようになることは、この舞台でもできるようにならないと、トップ8というところに入っていけないのかなと感じています」

 そのためには、戦い続けるしかない。初めてのワールドカップで得た最大の収穫は、その「気持ち」だろう。

「もっとうまくなりたい、もっと強くなりたいというその気持ちは、やっぱりすごく大事にしたい。その気持ちが、今後の僕のサッカー人生においての大きな原動力になっていくと思います。その気持ちを持ち続けて、とにかく成長できるように、もっともっと戦える選手となれるように、1日1日を大事にしながらやっていきたい」

 立ち止まっている暇はない。