鎌田大地がエースとして臨んだカタール・ワールドカップ。全4試合で先発出場したが、ベスト16の壁を破ることはできなかった。4年後に越えるために、まずはビッグクラブで主力になるという「日常の壁」を破る戦いに打って出る。

上写真=鎌田大地(右)が4年後への意欲を語った(写真◎Getty Images)

■鎌田大地カタール・ワールドカップ出場記録
・11月23日 グループE第1戦/○2-1ドイツ=フル出場
・11月27日 グループE第2戦/●0-1コスタリカ=フル出場
・12月1日 グループE第3戦/○2-1スペイン=68分までプレー
・12月5日 ラウンド16/▲1-1(PK1-3)クロアチア=75分までプレー

「言葉ではなくてサッカーで証明できたら」

 鎌田大地の初めてのワールドカップは、その心に何を残したのか。

「間違いなくできることをして、いままでと違って前半を捨てずにちゃんとプレーはしていたと思うし、トライはしていたと思います。ただやっぱり、後半に運動量が少し下がってセカンドボールを拾われたり、なかなか前に行けない状態が続きました」

 大会を去ることになったラウンド16のクロアチア戦で、未来への種のようなものをつかんでいた。ドイツ戦とスペイン戦の勝利はお見事で、ただ守備に回る時間がとても長かった。クロアチア戦では相手の力を受けることよりも、自分たちからプレーを選択する時間が増えたことが手応えだった。

 しかし、勝ちきれなかった。初めて先制したものの、追いつかれてPK戦で敗退。もちろん細やかな反省は残るが、その源をたどれば、鎌田の見立てはシンプルだ。

「それはやっぱり、クロアチアにはモドリッチやコバチッチ、ブロゾビッチという選手がいて、日本にはやっぱり彼らのようなクオリティーがあったり、時間を使えたり、余裕を持たせてあげる選手がいなかった。それが大きな差だったと思う」

 スペインのレアル・マドリードで、イングランドのチェルシーで、イタリアのインテルでそれぞれ主力としてプレーするクロアチアの中盤三銃士。ヨーロッパで存在感を示しつつある選手が中心になって構成された日本であっても、そのレベルには達していない。

「だからこれから、この4年間でどれだけいいチームでプレーできる選手が出てくるかが大事だし、自分たち次第でそういうチームになれるのかなと思います」

 それは、鎌田自身が証明してきた。フランクフルトでは昨季、ヨーロッパリーグ(EL)で優勝し、その中心選手として名を馳せた。今季はチャンピオンズリーグ(CL)を戦い、それに伴って日本代表でもポジションをつかんだ。

「僕に関しては去年のELの優勝がすごく大きかったし、今季もCLがあって、この1年は自分にとって本当にファンタスティックで、信じられないシーズンを過ごしていると思う。これをどれだけ継続できるかなので、がんばっていきたい」

 ワールドカップ最終予選を主に4-3-3システムで戦った日本が、ワールドカップで4-2-3-1システムに戻し、さらには3-4-2-1システムに移行したのは、クラブで結果を残した鎌田の力をうまく取り込むことが理由の一つだった。4試合すべてに先発出場して、チームに献身をもたらした。

「いいクラブでプレーして日本人の価値を高めることが、僕にとってはできることだと思う。この次のワールドカップだけではなくて、将来日本がワールドカップで優勝を目指したいと本気で言えるような国になるには、やっぱりそういう選手がいなければ。いまままでビッグクラブに行った選手はたくさんいますけど、なかなか定位置をつかめなかったのが日本の状況だと思うんで、僕自身はそこの壁を壊したいと思っています」

 ベスト16の壁の前に、日常の壁を壊す。

「昔からそうでしたけど、常にうまくいかないサッカー人生だったので、いい意味でそういう人たちの期待を裏切ってここまで来たと思う。自分はもう本当にサッカーの結果で見返していけるとわかっているので、だから僕は言葉ではなくてサッカーで証明できたらいいと思います」

 期待を超える裏切りならば、いくらでも歓迎だ。4年後を勝負のときと見据える。 

「今回のワールドカップに関しては初めての選手がほとんどだったと思いますけど、次は今回の選手がまたよりいい年齢で、いい状態で臨めると思うので、次が本当に勝負なのかなと思います」

 そのチームで、「代表に対する思いは間違いなく増えた。この4年間はそれこそ本当に自分が代表を引っ張っていけるような存在になりたいと思っています」と宣言した鎌田が中心にいる。