12月1日、運命の一戦がやってくる。カタール・ワールドカップの第3戦で、日本が決勝トーナメント進出をかけて戦うスペイン戦だ。歴史的勝利をもぎ取ったドイツ戦で決勝ゴールを挙げた浅野拓磨には、あの歓喜をもう一度、という期待がかかる。

上写真=浅野拓磨は一躍、時の人に。ドイツ戦の決勝点は鮮烈だった(写真◎Getty Images)

「僕たちよりも上の実力があることは百も承知」

 初戦でドイツから逆転ゴールを奪い取って、一躍、時の人となった浅野拓磨。しかし、続くコスタリカ戦で0-1で敗れたことで、歴史的勝利の余韻はフラットに戻った。

 浅野はコスタリカ戦には後半から登場した。しかし、ゴールは生まれなかった。それでも、意気消沈する周囲とは少し異なり(もちろん、敗戦には大きな後悔を残したが)、ポジティブな感覚も得ていた。

「コスタリカ戦に関して僕個人の意見としては、間違いなく90分を通して、チームとしてイメージを共有しながら、やるべきことをやりながら戦えていた試合だと感じています」

 ワールドカップという世界最高峰の舞台ではなおさら、結果がすべてであるということは、火を見るより明らかだ。そうだとしても、グループステージは全部で3試合ある。2試合を終えて勝ち点3というリアルは、最低の結果ではない。

 第3戦はスペインが相手。初戦でコスタリカから7ゴールを奪って度肝を抜き、続くドイツとは1-1のドロー。このグループの首位をゆく。

「弱点がどこかと言われて、果たしてそこが弱点かどうかというのも、正直やってみないとわからないところがあります」

 そこ、というのは、スペインがコンパクトな陣形を組むことで高いラインの「向こう側」にできるオープンスペースのこと。やってみないとわからない、ということは、裏を返せば、実際にやってみて相手の出方次第で対応する幅広い術を持っているということにもつながる。

「大事なのは、やっぱりボールを奪った瞬間。縦に速い攻撃は間違いなく生きてくると思います」

 それは相手がどこであろうと変わらないが、スペインのように適度な距離感を保ちながらボールを動かすチームから奪えば、その裏側に活路を見いだせる。日本には、浅野、伊東純也、前田大然とスピードスターが揃っている。「一つのチャンスを淡々と狙っていければ」と、愚直に何度も走るつもりだ。

 その「走る」がキーワードになるだろう。

「スペインが僕たちよりも上の実力があるチームだということは百も承知」だから、「何が必要なのかといったら、相手よりも走ること」であり、それに付随して「前の選手だろうがディフェンスだろうが関係なく、まず守備の部分でチームのために走って体を張って戦うところがベースになってくる」と見据える。無駄を省いたコアの部分で、スペインを凌駕する必要がある。

 ドイツ戦の歓喜をもう一度、という浅野への期待は大きい。それを再現するにしろ、別の選手が結果を残すにしろ、「戦う」ことの意味を表現できたほうが勝つという真実が、より問われる一戦になりそうだ。