上写真=脇坂泰斗は香港戦で持ち味を十分発揮。FKからゴールも狙った(写真◎小山真司)
「いろいろな人と関わりながらプレーしたい」
脇坂泰斗が日本代表の一員として2試合目の出場を果たしたのが、7月19日の香港戦。デビュー戦となった2021年3月の韓国戦は86分からの登場で時間が短かったが、今回は64分からおよそ30分。実質的にはこの試合がデビューと言ってもいいかもしれない。
6点の大量リードでピッチに入ったから、過度なプレッシャーはなかった。でも、だからこそ、トップ下のポジションに入ったにもかかわらず「ゴールに向かうプレーが足りなかった」と猛省する。
「シンプルにはたいてもらったり、勝負のパスを出したり、チャレンジしていけばよかった」
反省のポイントをやや慎重になった姿勢に求めたが、清らかな水のように流れるプレーは存分に生きていた。
「集まって時間は短かったけれど、Jリーグで対戦して良さを知っているし、知ってもらっています。だから、ポジションを取ればボールが入ってくるので、ポジションを取ることに集中して、あとは受けるだけにならずに他の選手とつながることをトレーニングを重ねてできていました」
つながる、はまさに川崎フロンターレで輝いているプレーの一つだ。日本代表でも同じように「前と後ろをつなぐ役割、受けてさばくのは自分の良さでもあるので、アピールしたい」という思いは強かった。
「全員とつながっていくことで攻撃の厚みとバリエーションが出てくると思います。それは自分の良さでもあるので、いろいろな人と関わりながらプレーしたい」
終了間際にはその「つながり」でビッグチャンスを作っている。90+3分のことだ。
右サイドで岩崎悠人が持ったときに中でサポートし、足元に要求した。しかし、相手がコースをふさいでくると前の町野修斗に出すように指で示している。そのとおりに岩崎から町野にボールが渡る間に脇坂は首を振って中を見て、宮市亮の動きを確認した。町野のポストプレーで落としたボールをもらうと、宮市が入り込んでくることを予測して足元に強いキックで差し込んだ。トラップしてそのままシュートが打てる絶好のパス。宮市は相手にコースを防がれたために右に持ち出し、最後は中に送って岩崎悠人がシュートを放っているが、相手の行動を見て瞬時に判断を変え、仲間を見て最高のボールを届ける、という一連の流れはまさに脇坂の真骨頂だ。
「信じて走ってくれる選手が多いので、判断を誤らないようにしたい。チャレンジするところはチャレンジして、勝負をしない時間帯だったら時間を作る、という緩急を使うことで、速い攻撃も生きてくると思うので、落ち着かせる時間も大事にしたい」
最終予選を勝ち抜いた日本代表のメンバーには、守田英正や田中碧、三笘薫、谷口彰悟、山根視来など、川崎Fでともに戦った仲間たちがいた。そこに食い込んでいく意志は、堅い。
「ラストチャンスだと思って、自分のキャリアの分岐点だと思って、日本代表のE-1選手権優勝のために自分の力をピッチに注ぐだけかなと思います」
その力を誇示する時間は、まだ2試合、180分も残っている。