7月19日、E-1選手権の初戦となる香港戦で、藤田譲瑠チマが日本代表デビューをフル出場で飾った。横浜F・マリノスのチームメート、岩田智輝とともにボランチでプレーして、落ち着き払ったプレーの連続だった。しかし、自身の感覚はそれと正反対で…。

上写真=藤田譲瑠チマは仲間の背中を押すようなジェントルなパスを連発した(写真◎小山真司)

「チームが勝つためのプレーが得意」

 26分、相手の縦パスのミスをワンタッチで右のオープンに送り込み、水沼宏太を走らせてカットインからシュートへと導いた。

 33分、自らが右の裏に走り出してボールを受けてポイントを作り、山根視来を中央に入れて、そこへ横パスを送ると、山根がワンタッチ、町野修斗もフリックして水沼がシュートを打った。

 40分、ゆっくり回すリズムの中で何度も顔を出してボールを出し入れし、右で受けてから西村に前を向かせる優しいパスを送って、ゴール左へ送り込むチーム4点目をアシストした。

 55分、チームの5点目もきっかけのパス。右の山根に渡して前向きに持たせると、そのままゴール前に走っていく間に、水沼、山根と右を崩して最後は相馬勇紀がバックヒールで決めた。

 63分、左から回り込んだ岩田智輝の動きを見逃さず、西村拓真の横パスをワンタッチで裏のスペースにスルーパスを送り込んだ。

 藤田譲瑠チマはこの5つの例にとどまらず、印象的なプレーを何度も何度も繰り出した。日本代表初出場とは思えないほどの落ち着き。

「90分間を通して、なかなか自分の中では納得のいくようなプレーができなくて」

 ところが藤田自身の感覚は、真逆だった。実力差が歴然とする相手だから、いわばできて当たり前のプレーよりも、できなかったことのほうに意識が向いた。

「球際のところや、セカンドボールを拾ったあと、奪ったあとのファーストプレーでまた相手に奪われたり、ラインを割ってしまうシーンが多かったので、もっと直していかないと攻撃の時間が短くなってしまいます。もっと簡単に前に付けられるシーンもあったし、テンポを作って正確なパスで相手を困らせるシーンをもっと増やせたと思います」

 テンポを作る、がキーワードだろう。U-21代表のキャプテンとして臨んだU-23アジアカップでも、所属する横浜F・マリノスでも、藤田がボールを触ることで(あるいは、あえて触らないことで)攻撃の緩急が決定していく。だが、全員が揃ったのが試合前日だけという今回の代表チームにあっては、連係不足が否めないからこそ、細かなミスはなおさら自分に許せなかった。

「ドリブルで取られて守備をすることになるなら、パスを出していい場所でもう一度もらえれば余裕ができますし、チームの攻撃の時間もできます。自分の良さはドリブルではないですし、チームが勝つためのプレーが得意なので、そこは落ち着いて出せたと思います」

 最初に挙げた5つの好シーンに共通するのは、味方の背中を押すようなパスを送っているということだ。そのどれもが、受けた選手が前を向いてそのまま攻撃に向かうことのできるジェントルなタッチだ。強すぎず、弱すぎず、「ちょうどいい」パスばかり。

「持ち味である、攻撃のところでテンポを出すプレーや、守備なら1対1の強さやセカンドボールを拾うところを全面に出していければ」

 森保一監督からは「代表デビューおめでとう。まだまだこれからだから、頑張るように」と言われたという。そんな「これから」は、E-1選手権の残り2試合から始まる。中国戦、韓国戦、そして大会が終わってもさらにその先でのプレーに、ますます注目したくなる存在である。