日本代表は6月シリーズの4試合を2勝2敗で終えた。その中で森保一監督はさまざまなトライをしたが、チュニジア戦では相手のシンプルな対策で劣勢となり、完敗。いくつもの課題が明らかになった。

上写真=チュニジア戦で相手に狙われることになった遠藤航(写真◎JMPA毛受亮介)

文◎国吉好弘

本番前に相手の対策に屈した日本

「終わりよければすべて良し」というが、ワールドカップへの準備を進めるサムライブルーこと日本代表にとって、6月シリーズの4試合は最悪の終わりとなった。パラグアイを4-1で下し、FIFAランク1位のブラジルには0-1で敗れたが、ガーナも4-1で退けて、ここまでは想定内、あるいはそれを上回る結果だった。しかし、4戦目のチュニジアにまさかの0-3の完敗を喫した。

 相手チームのコンディションやモチベーションに違いがあったとはいえ、パラグアイ戦とガーナ戦では攻撃面で良いところを見せ、ブラジル戦では本大会でも優勝候補の筆頭となる相手に守備での強度、組織力を示した。だが、チュニジア戦では守備が崩壊したというよりはミスを連発して失点を重ね、攻撃では良い形を作る前の段階で相手にその芽を摘まれた印象だった。

 チュニジアではジャレル・カドリ監督が「我々は日本を研究して良さを出させないようにプレーした」と語ったように、攻撃の第一歩となる遠藤航のところをつぶされてスムーズな連係が生まれず、「守備には弱点があり、厳しい状況でミスが生まれる」と指摘されたとおりに、吉田麻也の背後を突かれて失点した。チュニジアは日本をよく研究していたが、相手が対策してくるのはワールドカップ本番になればなおさらのこと。それを見越しての対策を取れなければならないし、事前の情報戦で日本も負けないだけのものがあるはずだ。

 チュニジア戦で目立ったのが攻守のキーマンである吉田と遠藤の弱点を突かれたこと。この4戦はパラグアイ戦とガーナ戦では基本的にワールドカップ予選で出番の少なかったサブ組が中心、ブラジル戦、チュニジア戦は予選でスタメンからプレーした選手が中心となっていたのだが、二人は4試合ともスタートからプレーしており、それだけ不可欠な存在であることが示されていた。

 その分、疲労が蓄積し、チュニジア戦のプレーに影響していた面はあっただろう。だが、ワールドカップ本番でベスト8を狙うのであればこのシリーズと同様4試合を戦うことになり、同様の試合数をこなさなければならない。少なくとも4試合をプレーできる準備をしなければならないわけで、今回のシリーズはそのシミュレーションだった。そこで結果が残せず、4戦目で完敗したということは、またラウンド16で力尽きることを意味し、課題が残った。本番に向けて今以上にコンディションを高め、維持することができるのか、あるいはグループステージのどこかかで主力を温存する試合を設けることができるのか。本大会で上位の常連国はそういう試合を想定するが、グループステージでの展開にもより、特に強豪国ぞろいの日本のグループでは難しい。

 遠藤が狙われた点に関しては今回、守田英正が負傷で離脱し、田中碧もチュニジア戦では後半からの出場で、最終予選終盤に4-3-3にしてここで確立された遠藤、守田、田中のトリオ(3センターハーフ)が形成できなかったことも大きい。このトリオであれば、遠藤が苦しい状況に陥った際にいち早く対応できる。守田と田中は攻撃から守備への切り換えに素早く反応できるからだ。今回はその3人に代わる存在を探すことにトライしたわけだが、原口元気、鎌田大地、久保建英、柴崎岳と、いずれも3人をバックアップするには物足りなかったと言わざるを得ない。

 鎌田は、攻撃では状況によって違いを生み出すこともできるが、その分3人によるバランスを崩してしまうときもある。攻撃に出る必要がある状況での限定的な起用が現実的かもしれない。得点につなげるプレーの可能性は示しており、そのオプションは捨てきれないからだ。E-1選手権を使って新しい選手を試す必要もあるかもしれない。U-23アジアカップで見事なプレーを見せている藤田譲瑠チマなどの昇格も視野に入るだろう。チームを刺激する一手が必要ではないか。

 ディフェンスラインでは今回、冨安健洋が最後までプレーできなかったが、板倉滉が安定したプレーを見せており、冨安と板倉のコンビに切り替えることも考えられる。しかし、このチームにおける吉田の存在感は大きく、キャプテンとしてのリーダーシップも含めて吉田を外すことは難しい。アイディアとしては吉田の疲労を考慮して板倉、冨安のコンビを併用していくことだが、その意味でも今回の4試合で二人がCBを組んだ布陣を試すことができなかったのは残念だ。

 この4試合を振り返ってみれば、最後の試合が完敗だったとはいえ、それですべてが悪かったというわけではない。その他の3試合で見せた良い部分は当然継続し、さらに伸ばしていくことが求められる。チュニジア戦で課題がはっきりしたこは逆に良かったと、後々言えるように。

 課題は多く、それを修正するための時間は限られている。海外組を集めての実戦機会は9月の2試合しかない。その中でいかにレベルアップを図るのか、森保一監督の真価が問われる。

 とはいえ、南アフリカ大会のときも岡田武史監督が戦術を変更を決めたのは大会も直前のことだった。ドイツ大会のように直前のテストマッチ見事なプレーを見せても本番ではうまくいかないことも少なくない。今のチームはこれまでよりも選手層が厚く、オプションも多い。それは日本サッカー全体の進歩を表しているだろう。この4試合の終わりが悪ければすべて悪しではなく、本番で「終わり良ければ~」としたいところだ。