前田大然が日本代表初ゴールを決めたのは、6月10日のキリンカップサッカー2022のガーナ戦でのこと。伊東純也からの折り返しを押し込んだ、いわば「快足コラボ」による一発。日本代表に新しい可能性をもたらすゴールになった。

上写真=前田大然がガーナ戦で代表初ゴール。伊東純也との「速さ×速さ」の一発だった(写真◎JMPA早浪章弘)

「当たればいいやという感覚で」

「僕はまだだと思っています。目の前の練習や試合をやっていくだけなので、あまりそこを見ずにしっかり目の前の1日1日を大事にしたいと思います」

「そこ」というのは、カタール・ワールドカップのこと。横浜F・マリノスで活躍し、東京オリンピックにも出場し、請われて冬に移ったスコットランドの名門、セルティックではいきなり大活躍してリーグ優勝に大きく貢献。そしていま、およそ5カ月後に迫ったワールドカップのサバイバルに臨んでいる。

 アスリートには流れとかタイミングが大きく影響するが、前田はそれをしっかりつかんできて、いまの場所にいる。それでもまだまだだというのは、「遅れ」の感触を抱いているからだという。

「特に前回(3月)、辞退しているので、まず出遅れている部分がありますし、この4試合は自分の中で本当に大きな試合だと感じています。まだいいパフォーマンスを出せていないと思うので、あと1試合、チャンスがあればしっかり狙っていきたい」

 6月シリーズの4試合中、ここまでの3試合すべてに出場している。初戦のパラグアイ戦では絶好機を逸して悔いを残し、ブラジル戦ではなかなかボールが巡ってこなかったが、ガーナ戦ではついに代表初ゴールを決めてみせた。82分に右から伊東純也がスピードに乗って進んでくるのに合わせてゴール前にド迫力で突進し、センタリングを左足で押し込む記念の一発。ゴール前でDFの背後に回り込むようにランニングのコースを変えた工夫が実った。

「ああなったらディフェンスはクロスしか見えないので、しっかり相手の裏を取って、あとはボールがくればフリーでシュートを打てることはマリノスのときからわかっていました」

 伊東と前田の「速さ×速さ」のゴールには、新しい可能性がつまっている。

「あれは左で触りましたけど、ぎりぎり触っている感じで、当たればいいやという感覚で足を出しているので、そこまで何かを意識していることはないんです」

 伊東も古橋亨梧も上田綺世も南野拓実も三笘薫も、それぞれが異なるスピードの質を持っていて、競い合っている。前田のそれは、Jリーグ時代に何度も話題になった「スプリントのループ」だ。繰り返し繰り返し、ダッシュを繰り出す。

「前線からの守備、背後への抜け出し、クロスに入るプレーは持ち味でもあるので、意識してやっています」

 その快足が世界を驚かせる日が待ち遠しい。