6月6日のキリンチャレンジカップ2022で、日本は世界ランク1位のブラジルに、0-1で惜敗した。だが、スコア以上の差が衝撃的だったのも事実。長友佑都は自分を追い込んで迎えた決意の一戦に手応えを感じながら、世界トップとの距離を感じていた。

上写真=長友佑都は確かな手応えと、それ以上のブラジルとの差を感じ取った(写真◎JMPA福地和男)

■2022年6月2日 キリンチャレンジカップ2022(@国立競技場/観衆63,638人)
日本 0-1 ブラジル
得点者:(ブ)ネイマール

「個の力ではがせない」

 長友佑都の悲壮な決意が、実った。

「もちろん毎回、生きるか死ぬかだけど、今日は特に、守備ができなかったり1対1で勝てなければ、世界で通用しない、もう終わりだな、という気持ちで臨んでいました」

 81分間のプレーで出た答えは、「まだまだやれる」だった。

 世界ランク1位のブラジルとのテストマッチで、長友が任されたのは右サイドバック。本職の左とは逆。でも今季、FC東京でプレーするポジションだから、「自信はあった」と胸を張る。対峙するのは、いまをときめくヴィニシウス・ジュニオール。レアル・マドリードでヨーロッパ王者になったばかりの若きアタッカーは、長友も「バロンドールを取ってもおかしくない」と認める逸材だ。

 そんな選手をここで止め続ければ、道が開ける。

「ヴィニシウス・ジュニオールに1対1でやらせないで、守備の強度を見せられたと思います。もちろん、味方のサポートがあったから止められたけれど、まだまだやれるなと感じさせてくれた試合でした」

 攻撃に出れば、右ウイングの伊東純也のためにワイドのスペースを空けておいて、内側のレーンに立ち、あるいは走り抜け、ニアゾーンを取ってクロスを試みるなど工夫を凝らした。

「正直、僕がいままで対戦したブラジルは手も足も出なくて、常に悲壮感を感じていたし、何もできない自分が腹立たしかったんです。今日は、もちろん1点差で負けたわけだし、1点差以上の差はあると思うけれど、いままでの何もできなかったブラジル戦と比べると、僕自身は手応えを感じました」

 でも、ブラジルはやはりブラジルだ。100パーセントの力ではなくても、あまりにも圧倒的な攻撃、あまりにも堅すぎる守備。

「中盤やサイドで不用意なパスミスをして、ショートカウンターでチャンスを作られました。後ろからのポゼッションの質はもっと精度を上げなければここからは難しい」

 そして何より、こちらの攻撃は脆弱だった。シュートはわずか4本。枠内に飛んだのは古橋亨梧の1本だけだった。屈辱的だろう。

「最終的にアタッキングサードで個ではがせないと、本当の意味でのチャンスを作るのは難しいと思います。パスワークで行けるところまでは行けるけれど、そこから個の力ではがせない。サイドの攻防も中央の攻防も、ブラジルとは差を感じます。だからこそ、一人ひとりが取られてもいいから勝負する強気な姿勢を見せないと難しい」

 個の力、とは一体何なのか。ボールを扱う技術も、90分間、走り続けられる体力も大事な「個」だ。でも、目の前の邪魔な相手をどんな方法を使ってでも排除する、ということなのだ。飾りのないその真実を、ブラジルがもう一度教えてくれた。

 長友がまだまだ終わらないのは、そこに改めて挑んでいく意欲が全身を貫くからだろう。