カタール・ワールドカップに向けた準備として、まずは6月2日にパラグアイと戦う日本代表。4連戦の初戦を前にオンライン取材に臨んだ田中碧は、ポジション争いに挑みつつ、東京オリンピックでの経験を踏まえて、世界でどう勝つかを見据えている。

上写真=田中碧は「この代表期間で自分の価値を示せるか」と引き締めている(写真◎山口高明)

「常に後出しジャンケンをしなければいけない」

 田中碧とブラジルと言えば、2ゴール。東京オリンピックへの強化のために2019年10月にブラジルに渡って戦ったU-22代表同士のテストマッチで、先制されたあとにペナルティーエリアの外から蹴り込む連続ゴールで逆転してみせた。最終的に敵地で3-2の勝利を収めたが、その「ゴール」にいま改めて目覚めている。

「ドイツでプレーして、ゴールへの価値が、日本にいるときより自分の中で変わりました。いままでは90分通していかに関わり続けて勝利に導けるかを大事にしてきましたが、向こうでは90分だめでも点を取ることが評価されます。ゴールというものが非常に重要で、試合を動かすものだと改めて感じたので、そこを追い求めていかなければと」

 攻撃でも守備でも、いかに両方のゴール前でプレーできるか。ドイツでの最初のシーズンで、それを自らに課してきた。

 6月に戦う4試合、その先に見据えるワールドカップは、はるかにレベルの高い相手が待ち構えている。ドイツとスペインが同組になることが決まった本大会の前に、6月6日に世界最高峰のブラジルと対戦できることは、大きな意味を持つ。

 あくまでテストマッチではあるが、日本がワールドカップでどう戦うべきなのかの試金石になるはずだ。カテゴリーこそ違うが、ブラジルから2点を奪った男はこう考える。

「僕自身、相手との力の差があるのはわかっていますが、彼らのために自分がスタイルを変えるのではなくて、まずはできることをぶつけることが大事だと思っています。ゲームの流れやスコアの状況で戦い方を変える必要はありますけど、まずは持っているものを全部出すことが必要で、受けて立つというより自分たちからアクションを起こさないと、強豪と戦うチャンスなので意味がないと思う」

 強豪との激突という点で言えば、東京オリンピックでもスペインと準決勝で戦った。延長戦後半の最後に決められて敗れたが、守備への手応えは確かにあった。

「ブロックを作るのは心地よくはないですよ。それこそオリンピックのスペイン戦は後半から完全に切り替えて、115分までずっと失点しなかったですけど。やられているように見えたかもしれないけれど、プレーする僕たちからすると、やられる気はしなかったし持たせているイメージはありました。望んでブロックを作っているわけではないけれど、ぶっつけ本番でやったとしてもあれだけ守れる力は日本にはあると思います。A代表ならその力はもっとあるし、相手のクオリティーも上がるけれど、変に苦手意識を持っているわけではないと思います」

 守備で計算はできる。だから、攻撃でどこまで相手に迫ることができるのかを試す必要がある、というわけだ。その基準は、攻めてみなければわからない。

「​​サッカーなので、勝ったほうが強いので僕は勝てばいいと思っています。ただ、勝ち方を求められるチームは世界で限りなく少なくて、そういう選手やチームに近づくことが重要であって、近づくためには内容を求めなくても勝つ経験をし続けることが大事だと思います」

 それは公式戦であってもテストマッチであっても同じこと。勝つために、何をするべきか。勝つためであれば、前から奪いにいこうとブロックを作って構えようと、チームとして統一できていればどちらでもより良い方を選択すればいいというスタンスだ。

「僕は能力が高くないので、常に後出しジャンケンをしなければいけないと思っています。相手を見てやることが自分に必要不可欠なので、だからこそ、相手がどうかではなく、自分にとってそれが必要な作業であって、チームにとって有益になればいいと思っています」

 相手を見ることは、相手に合わせることではない。その姿勢を、まずは堅守のパラグアイにぶつけていく。