上写真=オンライン記者会見に登壇した吉田主将と森保監督(写真◎JFA)
サッカーファミリーの力がこの結果を導いた
晴れやかな笑顔だった。7大会連続7回目のワールドカップ出場を決め、会見に出席した4人が4人ともサッカーファミリーに対して感謝の思いを述べる時には、喜びを分かち合えるという思いや安堵の気持ちから頬がゆるんだ。
振り返れば最終予選は、スタートから厳しい戦いの連続だった。初戦はホームでオマーンに敗れ、2戦目で中国に辛勝したものの、3戦目は敵地でサウジアラビアに敗戦。3戦2敗となり、いきなり予選突破に暗雲が漂った。
続く4戦目のオーストラリア戦で、あとのなくなった日本は新たな手を打った。「ターニングポイントは、ホームで行なわれたオーストラリア戦。選手の並びを変えて若い選手を投入し、チームのエネルギーがアップした。そのままいい結果につながったのが一つの大きなポイントだった」と反町技術委員長は振り返った。そこから過去の最終予選でも例のない6連勝を飾り、日本はカタール行きの切符をつかみ取った。1試合を残して突破を決めるとともに、ついにグループの首位に立った。
言わば、どん底からV字回復を果たしてW杯の出場を決めたが、その厳しい道のりを前進し続けられたのは、日本サッカーの総合力、日本のサッカーファミリーの力だと、4人は改めて強調した。会見での主なコメントは以下の通り。
田嶋幸三会長「出場は最低限のハードル」
「応援してくださった国民の皆さん、サポーターの皆様に感謝申し上げます。そして日頃から子どもたちの指導、審判、代表選手を育ててくれた方々、関わってくれた多くの方々に感謝します。これ(W杯出場)は日本サッカー協会の会長として最低限のハードルで、それをクリアしたと思っています。これからカタールに向けて新たな準備をし、新たなスタートを切らないといけない。
険しい道のりでした。予選というのはそんなに簡単に勝てるものではありません。昨日のイタリア対北マケドニアの試合を見て、いたたまれない気持ちになりました。サッカーは本当に怖いスポーツです。そしてそのプレッシャーを一番知っているのが森保監督です。ドーハの悲劇を経験しています。そして、ここにいる吉田麻也選手以下、選手たちもそのプレッシャーと戦いながら、昨年9月から始まった予選の突破を1試合を残して決めることができました。本当にホッとしています。
この勝利は日本サッカーの歴史があるから実現できたと思っています。多くの皆さんに感謝するとともに、その責任をまた感じながらカタールに向けて出発したいと思います」
反町康治技術委員長「一番いい状況で本大会を迎えたい」
「全てのサッカーファミリーに感謝申し上げます。選手というのはわれわれが指をくわえていて出てくるものではありません。特に優秀な選手であればなおさらです。普及も含めて指導者との関わり、ユースの育成、そしてプロになる中で、たくさんの方々にサッカーファミリーとして関わっていただいています。こちらから『おめでとうございます』と伝えるとともに、感謝申し上げます。
最終予選は、スタートダッシュがうまくいかずに非常に苦しい状況になりました。しかしスタッフ、選手一同が逃げず、真っ正面から向き合って活動してきた結果、こうして(カタール行きの)切符を勝ち取ることができました。選手・スタッフに感謝したいと思います。なかなか最初はうまくいかなかったために、目標を下方修正して、まずはW杯出場ということを念頭に置いてやってきました。そして出場が決まり、これからはW杯ベスト8を目標に頑張っていきたい。次のベトナム戦がスタートになります。これからし烈な争いがチーム内でも起きると思っています。Jリーグ、海外組でも新しい選手がたくさん出てくる。一番いい状況で本大会を迎えたい」
森保一監督「第一関門を突破したに過ぎません」
「サッカー日本代表を日頃から応援してくださっているサポーターをはじめ、国民の皆さんに応援のお礼を伝えたいと思います。カタールW杯に向けて、われわれアジア予選を突破できましたが、最終予選は本当に厳しい戦いの連続でした。その厳しい戦いの中でサポーターの皆さんがいつも変わらぬ応援をし続けてくれたことで、選手、スタッフが下を向くことなく前進できました。全ての方に感謝します。われわれを応援してくださったサポーター、国民の皆さんと喜びを分かち合える結果を出せてとても幸せに思います。
しかし、まだ第一関門を突破したに過ぎません。カタールW杯に向けて日本歴代最高の成績、ベスト8以上をつかみ取るべく、ベトナム戦から最善の準備をし、一戦一戦全力で戦い、目標を達成したいと思います。引き続き見守っていただき、応援をよろしくお願いします」
吉田麻也主将「歴史を塗り替えることが目標」
「非常に厳しい環境下でチームが一丸となってこの結果を勝ち取ることができて、満足しています。協会のスタッフ、テクニカルスタッフ、メディカルスタッフ、非常にたくさんの方々のサポートのおかげで選手たちはプレーに集中することができました。移動も含めてスケジュールがタイトで、タフな予選を強いられてきましたが、なんとか結果を出すことができて、心の底からうれしいです。
ただ、もう1試合あります。この予選を1位で突破することが僕たちがアジアで自分たちの力を改めて示すいい機会になると思っています。僕たちの目標はカタールW杯でベスト8に行くことです。日本サッカーの歴史を塗り替えることがチームの目標ですし、僕自身の目標でもあります。イチから競争が始まるし、今日から一人一人がさらに日本サッカーを高めていけるよう頑張っていきたいと思っています」
主な質疑応答
ーー森保監督への質問。日本人監督として4年間率いてW杯出場を決めた初めての監督になった。プレッシャーはあったか。
森保監督 私一人で戦っているとは思っていません。常に日本のサッカーファミリー全体で普及、育成の指導者、環境づくりをしてくださった方々と一緒に日本代表を強くしてきて、目標に向かっていると思っています。ただプレッシャーが一つあったとすれば、W杯に6大会連続で出続けている中で、日本人指導者として7回目を目指し、もし私が結果を出さなければ日本人指導者の評価が変わってしまうということについてプレッシャーがありました。世界で結果を出すというところには至っていませんが、アジアの中では日本人指導者がしっかりと勝って、そして世界に挑める、世界を追い越していけるというところで、他の指導者にも自信を持っていただき、(日本人指導者の)評価につながればという思いでやってきました。
ーー田嶋会長への質問。昨年9月の活動を終えて、森保監督への信頼は揺るがないと言っていたが、W杯本大会の出場が決まってどうとらえているか。
田嶋会長 このW杯予選の厳しさを選手としても体験していること、Jリーグの優勝経験も日本人としてトップクラスであるということ。(監督決定は)西野朗技術委員長時代のことでしたが、私は一度決めたからずっとやるという気持ちは持っていませんでした。ただ、「危機だ、危機だ」というのが本当にチームの危機なのか。チームの内情、選手との関係を見ている中で、揺るぎないと思っていました。だから確信を持って契約していただいた。さまざまなことを考えることはリスクマネジメントから必要なことで、そういうことをちゃんとしているからこそチームが前に進めると思っていますが、あらためて森保監督を信頼し、信じて、ここまでサポートできてよかったと思っています。
ーー吉田主将へ質問。カタールW杯に臨む上で必要なことは?
吉田 本大会でいいコンディションに臨むことが大事。いつもと違って、本大会前の準備が短いので、集まってすぐに大会になります。コンディション調整が難しく、バラつきがあると思うので整えることが大事だと思います。本大会では戦い方も変わると思いますし、アジアと世界で戦い方は違う。本大会ではプレッシャーで体が動かなくなったり、走れなくなることもある。ですから戦い方は柔軟にしていく必要があるし、それを経験のある選手が伝えていく必要があると思っています。
ーー吉田主将に質問。予選中にメンバーが入れ替わり、柴崎岳や前回予選で活躍した原口元気がベンチスタートが増えました。そのことについてどう感じているか。
吉田 予選を戦っている中で出る選手、出ない選手というのはわかるものですし、ポジションを奪われることもある。それは年が上になるほど受け入れるのが難しいことで、どう振る舞うかも難しい。でもその中でも柴崎、原口、川島(永嗣)選手もそうですが、彼らのベンチでの振る舞いを見て、出場機会の短い若い選手がどう振る舞えばいいかを分かる。このユニフォームを着て、日の丸を背負って戦う意味を理解するようになります。本当に経験のある選手に助けられたと思っています。非常にいいチームだなと感じます。
一つ言い忘れました。(3月29日の)ベトナム戦、6万人収容できるらしいです。なかなか予選を通してサポーターの前でプレーすることができなくて、僕だけじゃなくて選手みんながさびしがっていました。まだ声は出せないですけど、次のステップとして6万人、たくさん集まって、みんなで勝って、もう一回W杯出場をみんなでお祝いして喜び合いたいと思っています。サッカーの日本代表が6万人を集めて、クラスターを出さずに試合を終えることが次のスポーツイベントにつながると思います。ぜひみなさんスタジアムに足を運んでいただけたら。僕たちも最高のパフォーマンスでお返ししたいと思いますので、ぜひとも足を運んでほしいです。