日本代表は11月に行なわれるカタールワールドカップ・アジア最終予選の2試合をアウェーで戦う。DAZNで独占配信(中継)される今回の2連戦のうち、中村憲剛氏は11日のベトナム戦(21時キックオフ/配信20時20分開始)で解説を担当。サッカーの深みを分かりやすく語る解説に定評がある中村憲剛氏に、ベトナム戦、そしてオマーン戦の勝負のポイントと注目選手を聞いた。

田中と三笘の関係からのゴールを期待します

――ベトナム戦の展望ですが、勝負のポイントはどこにあると見ていますか。

憲剛 ボールの失い方。そこがカギになるんじゃないかと。基本的には日本がボールを握る展開になると思いますが、ベトナムは5-4-1のブロックを組んで、がっちりと守りを固めてくるので、日本はサイドバックの攻撃参加を含め、人数をかけながら攻め込む必要があると思います。その際にボールの失い方が悪いと、相手が準備しているカウンターアタックをまともに浴びることになりかねません。後ろ(守備陣)のリスク管理はもちろん、中盤から後方にかけての不用意なボールロストを最小限に抑えることが重要になるでしょうね。

――ベトナムの守備組織をどう崩すかという点では、どうでしょう。

憲剛 ブロック自体はコンパクトですが、ボールに食いつく傾向があるので、ライン裏にスペースがある。また、サイドから攻められた場合に守備陣がボールウォッチャーになってマークを外し、背後に走られるケースが何度かありました。そのあたりは狙い目になると思います。大事なことは、それぞれが相手の守りかたを見て、相手にとって守りづらい、嫌な立ち位置に立ちながら、正確に丁寧にプレーをすること。そして、相手の最終ラインを崩す時に「いつ出すか、どこで受けるか」というイメージを瞬間的に選手間で共有することがポイントになると思います。

――次のオマーン戦はどう見ていますか。

憲剛 日本が勝ちに行くのは当然として、問題はオマーンの出方ですね。ホーム戦なので基本的には勝ちに来ると思いますが、状況次第では「引き分けもアリ」というスタンスを取る可能性もあるのかなと。初戦で日本に勝っているので、ドローでも1勝1分け。最終的に日本と当該成績で争うことになった場合はオマーンが上位になりますからね。その意味で試合展開を読みにくい部分もあります。オマーンが勝つために前へ出てきてくれるほうが戦いやすいと思いますが、がっちり守りを固められても、しっかりと攻略の道筋を探りながら戦う必要がありますね。

――具体的には?

憲剛 オマーンの布陣は4-3-1-2で、守備の際はがっちり中を締めてきます。そのぶん大外が空いてくるので、そこをどう活用するかですね。サイドの高い位置でボールを落ちつかせることができれば、ハーフスペースからライン裏へ抜ける動きを絡めたりすることでチャンスをつくれると思います。あとはパスワークの質ですね。前回の対戦では各駅停車のパスが多く、守備側に的を絞られやすい状況になっていました。相手を見ながら1つ飛ばしてパスを送るなど、距離やテンポを変える工夫が必要になります。さらに言うと、サイドチェンジの活用ですね。オマーンは全体でボールサイドにスライドしながら守るので、逆サイドには大きなスペースが生じやすい。そこにタイミングよくボールを運べれば、チャンスが広がると思います。また、サイドチェンジを何回も繰り返すことで、守備のスライドが間に合わなくなり、彼らが固めていたはずの中央も空いてくると思います。そういう意味では、中と外をうまく使い分けることが大切になります。前回の教訓を生かしたいところですね。

――最後に、今回のアウェー2連戦で特に注目している選手を教えてください。

憲剛 三笘ですね。何しろ、独りで敵のマークをはがせますし、相手を複数集めることが可能ですから。そのスペシャルな能力は今後、日本の武器になっていくと思います。また、彼の能力を最大限に引き出すという意味では左のインサイドMFに彼をよく知る田中を据えることもポイントになるんじゃないかと。すでにコンビネーションが確立された関係ですからね。二人の関係からのゴール、期待したいと思います。