カタール・ワールドカップのアジア地区最終予選、10月7日(現地時間)のサウジアラビア戦でDF中山雄太が初出場した。アディショナルタイムのみのプレーだったが、ピッチでの体感をこれからにつなげなければならない。極めて冷静にチームを俯瞰する精神力と左足のクロスで、オーストラリアから勝利をもぎ取るイメージはできている。

上写真=中山雄太はサウジアラビア戦ではアディショナルタイムに登場した(写真◎JFA)

「言ってしまえば1-0で勝てばいい」

 中山雄太の「最終予選デビュー」は、とても短い時間だった。

 サウジアラビア戦の90+1分に長友佑都に代わってピッチに飛び出した。アディショナルタイムの目安は4分と提示されたから時間はなかったが、左足を生かしたクロスをゴール前に送って決定機を生む役割を与えられた。

「時間がほとんどなくて、展開的にもカオスな状態だったので、僕としてはもう少し早い時間からプレーできればよかった」

 1点を追いかける日本がパワーをかけてゴール前にボールを送り込んで、サウジアラビアがはね返していくオープンな展開。だから、なかなか効果的なプレーはできなかった。

 ただ、このチームで攻撃参加のイメージはできている。

「オリンピックを見てもらったように、内側から上がったりサイドハーフをサポートしながら攻め上がったり、多くの関わりで攻撃参加するのが特徴だと思っています」

 東京オリンピックでは多くの選手とのコンビネーションによって攻撃のリズムを生んでいて、左サイドの軸になった。フル代表では先人の長友佑都がライバルだ。

「上に行くためには、長友選手の武器である縦の推進力は僕自身が課題として取り組んでいるところです。オランダの(所属のズヴォレの)試合ではチャレンジの回数を増やして手応え感じつつ、課題も感じているところです」

 周囲との関わりをベースに、自分で突き進む。それが中山雄太の進化形。

「バリエーションは増えてきています。逆に言えば長友さんと違うタイプのものも持っていて、長友さんの特徴も盗みながらやりたいので、両方を突き詰めていきたい」

 出場することになれば、現在のマックスパワーをオーストラリアに思い切りたたきつける。

「やみくもに攻撃参加をするわけではなくて、いつ上がるべきなのか、もしくは上がるべきではないのか、中からなのか外からなのか、といったことを判断材料に入れながらプレーしたいと思っています」

 そして攻め上がれば、左足でどう仲間に送り届けるかの局面で技術を見せる。

「相手は高さがあるので、クロスの種類やタイミングを考えていきたいと思います。難しいけれど、僕の中では高さを質で上回ればいいという思いもあるので、状況を見ながら判断してプレーしたいと思います。それに、高さがあって中を固めてくる相手にはチェンジサイドを多くして揺さぶりかけることも大事で、攻撃が守備にもつながっていきますし、攻め急ぐことなく自分たちの時間を増やせればと思います」

 チームの苦しい現状を「僕自身は冷静に見ることができています」と落ち着いて感じていて、だからゲームプランは「言ってしまえば1-0で勝てばいいので、90分を通して1点を取って勝てるかという戦い方もあると思います。焦る必要はないと思います」ときっぱり。焦らず騒がず冷静に左サイドを駆け抜けてクロス、そしてそこから生まれるゴールを楽しみに待ちたい。