日本代表のDF冨安健洋が9日、W杯アジア最終予選、オーストラリア戦を前にオンラインで取材に応じた。7日のサウジアラビア戦に敗れ、日本は現在、グループBの3位。上位とは勝ち点差が6と広がっており、次戦は負けられない一戦となる。危機感を募らせる冨安は、課題を指摘し、選手間の意識のすり合わせが必要だと語った。

上写真=ランニングしながら酒井宏樹と話し合う冨安健洋(写真◎サッカーマガジン)

追い込まれた状況。勝つしかない

 サウジアラビア戦から2日後、日本に戻り、12日のオーストラリア戦に向けて準備を進める冨安が取材に応じた。日本は0-1でサウジアラビア戦に敗れ、最終予選3試合を終えて3位につける。3連勝中のオーストラリア、サウジアラビアとは勝ち点6差をつけられている状況だ。むろん直接対決も残っており、挽回のチャンスがないわけではないが、冨安は「追い込まれた状況」と危機感を募らせた。 

 12日のオーストラリア戦までの短い準備期間の中では可能な限り選手間のすり合わせや意思統一に努めたいという。サウジアラビア戦については「後半になってシンプルなミスが増えたし、その時間帯に失点してしまった」と振り返り、「ミスが続いているなと感じていて、それを後ろから全体に伝えるのが必要」と反省も口にした。加えてチーム全体の問題として指摘したのが、ビルドアップの部分だ。

「ボールを持ったときに(遠藤)航くんを消しているというのは感じていたんですが、試合ではそこが空いていたのでシャドーを使って、スペインがやるような8番や6番を使うとか、サイドバックから入れてもらうとか。いま誰がフリーで、そこへどうボールを届けるかは、僕も含めてまだまだやっていく必要がある」と、相手の策略にはまり、たびたび機能不全を起こした組み立てについて改善が必要だと語った。
 
 確かに遠藤へのコースを切られた中で、日本はドイスボランチを組む柴崎が受ける場所を探す場面が目に付いた。サイドへ落ちるのは織り込み済みだったかもしれないが、結果的に安定した形でボールを前へ運ぶことができなかった。日本の好機の多くはショートカウンターから生まれている。それ自体は悪いことではないものの、『つなげない』ことでペースをつかめなかった面はあるだろう。ゲームコントロールがままならず、ミスを繰り返すことにもなった。

「全員がいま誰がフリーなのかを感じる必要があると思いますし、相手のシステムをしっかりと判断材料として持って、相手のシステムがこうだから誰がフリーになるというのを共有しないといけない。それを分かった上で、どうボールを動かすか。どういうふうにフリーの選手に持っていくかを共有しないと」

 サウジアラビア戦は5万を超えるアウェーの観衆の中で行なわれ、ピッチ上では声が通りにくかった。その中で個々の選手がいかに状況を把握し、最適解を出すかが問われたわけだが、後半、相手が圧力をかけてきたときに、各々が出す回答にバラツキが出た。それは森保一監督の就任以来、課題とされてきた問題でもある。2019年のアジアカップ決勝のカタール戦で露呈した、ピッチ内での状況把握とプレー選択という問題は、サウジアラビア戦でゲームを落とす要因の一つになった。

「サイドチェンジが、後半は特にないと感じていました。それは試合中にも伝えたし、試合後にも話したのでよりよくなっていくと思います。スローインのところでも(ボール)ロストがいつも多すぎるので、そこを共有してどう逆サイドまでもっていくかを練習でもやっていかないといけない」

 冨安が不在だった9月のオマーン戦でも日本は相手の前からのプレスに苦しみ、サイドに寄せられると、逆サイドにボールを逃がすことができずに苦しんだ。オマーンの策略にはまり、苦しい戦いを強いられた。今回も同様の傾向が見られたということは、日本が抱える恒常的な問題と言えるかもしれない。ピッチ状態も無関係ではないが、前半はできていていたサイドチェンジの数が圧力を受けた後半は大きく減少した。ボールを持った後、どう攻めていくのか。相手がハメに来た際にどう対処するのか。

 サウジアラビア戦で出たいくつもの課題を中3日で迎えるオーストラリア戦までにすべて修正するのは難しい。ただ、一朝一夕ではいかないの中でも選手間で問題点を共有し、ある程度は割り切ってプレーすることも必要ではないか。

「覚悟というところでは正直、サウジアラビア戦は足りなかったと思うし、ただ、1人1人は思っているところもある。全員が本当に頑張っているし、勝ちたい、W杯に行きたい気持ちもある。それをピッチで表現しないといけないし、どうやってその気持ちをチームとしてプラスの方向にもっていくか」

 9日、日本到着後、最初の練習が行なわれた。サウジアラビア戦で先発した選手たちはランニングなどリカバリーのみだったが、練習後にピッチ脇で選手が話し込む姿が見られた。参加していたのは、冨安のほか、吉田、長友佑都、酒井宏樹、遠藤航、南野拓実。

 できること。できないこと。そして、オーストラリア戦に向けて今、やるべきこと。頭の中を整理し、曖昧さを排除して臨まなくてはならない。言うまでもなく、選手間のすり合わせのみならず、監督が明確に指針を示すことも必要だろう。勝ち点は計算上、まだ挽回できるが、ここで引き分け以下の結果となれば、ますます追い込まれ、チーム状態を上向かせる手立てもなくなる。

 オーストラリア戦は、文字通りの正念場。必要なのは、勝ち点3。それだけは、はっきりしている。