日本代表は2日、FIFAワールドカップ・アジア最終予選の第1節、オマーン戦に臨んだ。冨安健洋と守田英正が不在で、板倉滉が負傷離脱。南野拓実も負傷により先発を外れる中で初戦を迎えた日本は、序盤から攻撃の形を作れず、苦しい戦いを強いられる。攻め手に乏しく、試合終了間際によもやの失点。「初戦は難しい試合になる」と警戒していたはずが、その言葉通りの内容に終始して、0-1で敗れることになった。

上写真=日本はオマーンに敗れ、最終予選を黒星でスタートした(写真◎JMPA早浪章弘)

■2021年9月2日 FIFAワールドカップ・アジア最終予選(@市立吹田サッカースタジアム/観衆4,853人)
日本 0ー1 オマーン
得点:(オ)イサム・アブダラ・アルサビ

88分、悪夢が訪れた

試合開始前から振り出した雨がピッチを叩く音が聞こえるほどに激しいものだった。そのせいだけではないだろうが、日本の立ち上がりは、やや重たいものになる。つなげるときはにはつなぎ、前線のボールを入れてセカンドボール回収に力を注ぐときには注ぐ相手に受けに回る場面が多く、素早い切り替えも見せられなかった。そのために良い形でボールを奪えず、良い攻撃を展開できない状態に陥る。

 意図した立ち上がりではなかったにせよ、日本はその時間を切りぬけて15分過ぎからはようやく中を締めるオマーンに対し、サイドを使いながら攻撃の糸口を探り始めた。次第にボール支配率も高めたが、オマーンも切り替えが早く、相変わらず攻めの形は作れない状態が続く。前半最大の決定機を上げるなら28分の場面になる。左CBの吉田が相手最終ラインの裏へ斜めに飛び出した伊東にロングパスを通す。伊東はDFに囲まれながらもシュートまで持ち込んでみせた。シュートは相手GKの正面を突いたが、日本にとっては大きなチャンスだった。

 一方、最大のピンチは42分になる。左右に振られてゴール前まで進入を許すと、アルアラウィに至近距離からシュートを打たれた。吉田と長友がスライディングでコースを塞ぎ、事なきを得たものの、危ない場面だった。

 互いに決定機とピンチを迎えたが、前半は0ー0で終了。最初の45分間で、どちらが狙い通りの戦いをしていたかは明白だった。オマーンは用意してきたものをしっかり出していた。

 後半、だからこそ日本は先に状況改善の一手を打った。開始から原口に代えて古橋を投入。所属するセルティックでワイドなポジションから一気にゴール前に入っていくプレーを見せている古橋を左MFに入れて、幅を取ると同時にゴールも狙った。

 ところが好機を増やすはずが、50分過ぎに右サイド深く進入を許し、易々とクロスを上げられてしまう。長友が何とかクリアするも、主審はハンドと判断。PKを宣告された。結局VARを経て取り消しになったが、サイドを使われる場面がそれ以降も頻繁に見られるようになる。60分過ぎからは相手のカウンターを受けるシーンも増えていった。日本は伊東に代えて堂安、鎌田に代えて久保を投入。前線の活性化を図ったが、堂安と久保がコンビネーションでボックス内へ何度か進入したものの、あと一歩及ばず、ゴールは遠いまま。

 攻めあぐねる日本に、悪夢が訪れたのは88分のことだった。

 自陣左サイドで起点を作られると4人で囲みながらもボールを取り切れず、サラーにつながれる。フリーで左からクロスを入れられ、最後はCBの死角から斜めに走り込んだイサム・アブダラ・アルサビに決められた。

 セルビアで事前合宿を組み、しっかり準備してきたオマーンと日本のコンディションの差は明らかだった。しかしながら、それはアジアの中で強国となり、多くの海外組を擁するようになった日本の宿命だ。その状況の中でいかに自分たちの力を最大化するか。この試合はそれは大きなテーマでもあった。結果から言えば、最大化はできずに終わった。

準備期間のない中でどう戦うか

 戦前から難しい試合になると森保一監督も選手たちも繰り返したが、自ら発した言葉で暗示にかかってしまったかのように難しい展開にしてしまった。トップ下の鎌田が消され、大迫の落としもうまくつなぐことができなかった。中央からの攻め筋を断たれ中で、幅を取ることを狙ったが、素早いアプローチと帰陣を繰り返す相手の守備陣を広げられなかった。敵将イバンコビッチ監督は「日本はスモールサイドで攻めることが多い」と話した。相手の術中にはまり、そのスモールサイドからボールを大きく展開するような場面も作れなかった。

 守備でも失点シーンでは、セカンドボールを取り切れず、サイドにボールが入ったときには寄せる前にそのボールを逃がされた。疲れで寄せ切れなかった面もあっただろうが、人数をかける形になってしまったことで、一気に4人が置き去りにされ、挙げ句、フリーでクロスを上げられてしまった。ゴール前では走り込む選手を捕まえられず、残り2分のところで1点を献上することになった。

 試合終了の笛が鳴った瞬間、オマーンの選手たちはピッチで喜びを爆発させた。日本に初めて勝利し、「歴史的な日。オマーン人たちに誇ってほしい」とイバンコビッチ監督はコメント。対照的に、日本の選手たちは厳しい表情でピッチをあとにした。その明と暗が、この試合の意味を示していた。

 最終予選では今後も同じように選手が集合からほぼ時間のない中で試合に臨まねばならない。コンディションの差がある中で対戦するケースは十分に考えられる。森保監督はそのことについて、こうコメントしている。

「全体練習は2日だけでしたけど、言い訳にするつもりはありません。海外組が多くなる中、2次予選でも選手たちは覚悟を持って短いスパンの中でも1戦1戦、前進してくれたと思います。今回も同じような状況ではありますが、どんな状況でも勝っていく。そのときできる100パーセントを出す。今日の敗戦からもしっかりと修正して、次も同じような状況なときに勝利に結びつけなければいけないと思います。今回の状況の修正ということで言えば、流れが悪い時間に選手の距離感が遠くなっていた。より意思統一しながらいい距離感で試合を進められることが必要。与えられた時間で選手ができる限り同じ絵を描けるようにすることと、ミーティング等で選手とコミュニケーションをとって、試合に向けてより意思統一できるようにしたい」

 ロシアW杯の最終予選も初戦(UAE戦)をホームで落とした。前回予選を経験している酒井は「初戦で負けたら、そのあと3連勝しなければいけない状況になる」と警鐘を鳴らしていたが、図らずも、日本はよりプレッシャーのかかる状況を迎えてしまった。

「サイドに起点ができていたので、そこから相手の重心を下げて、攻撃を仕掛けるという部分で、試合の中で徐々に修正していけた部分があったと思います。ですが、もう少しクロスから相手のゴールに向かって行けるチャンスが作れればよかった。W杯の最終予選の初戦で敗れたという部分ではいろんな反省がありますが、この敗戦は、われわれが取り返すしかない。しっかり反省したうえで、次の中国戦に向けて修正をしながら良いエネルギーを作っていけるようにしたい」(森保監督)

 日本にとって最悪のスタートなった。だが、敗戦を引きずってはいられない。チームは今夜のうちにカタールへ立ち、7日には中国戦を迎える。相手は2週間以上前からカタールで合宿を張り、最終予選に向けて準備しており、今回と同じようにコンディション面で差が表れるかもしれない。それでも、中国戦の勝利はマストだ。カタールW杯へ前進することが求められる。