日本代表のMF守田英正が11日のセルビア戦を前にオンライン取材に応じた。ポルトガルに渡って半年間を過ごし、刺激的な日々を過ごしたボランチは、自身の成長について、そしてセルビア戦について語った。

上写真=ミャンマー戦とU-24代表戦は先発し、タジキスタ戦は68分に途中出場した守田英正(写真◎JMPA早浪章弘)

セルビア戦は自分を試す場

 ポルトガルで過ごした半年間は、実に濃密なものになった。川崎フロンターレからCDサンタ・クララ移籍したのは今年1月だが、ポルトガルで新たな気づきを得て、成長につなげたという。一つは自己表現。ポルトガルで活躍するために、自ら発信するようになった。

「メンタル面の成長は大きかったんじゃないかなと感じます。もともと川崎のときからもそうですけど、自分から発信したりするタイプではなかった。でも『もっとこうしたい、ああしたい、こうした方がいい』と話すことを始めました。人を生かしたり合わせることは得意だったんですけど、自分が活躍するとか、こういうことができると周りに見せるため、認めてもらうためには、自分も生かしてもらうことも必要だなと感じた。僕のプレースタイルとして、僕と同じような考え方だったり、プレースタイルとして合う選手が数人必要だった。そういう選手に自分のサッカー観を伝え、生き抜くために、自分からコミュニケーションを取りに行きました」

 もともと、スキルフルでパススピードも速く、ボール奪取能力にも優れる。だが、一人で何かをするタイプではない。周囲との関係性を深める中で周りを生かし、自らも生きる。その持ち味を十全に発揮するために、守田は行動を起こした。ポルトガル語は「まだ話せません」という状態ながら、簡単な英語と時にはスマホの翻訳アプリや戦術ボード、映像も駆使して自分の意思を伝え、チームメイトと考えをすり合わせていった。その結果、周囲にその力を認めさせることになった。海外で生きるために、自分の意識を変え、行動したのだ。

「日本に居る時よりは、(発信)できるようになった。それによって人に合わすことだけではなく、合わしてもらうことだったり、これは分かり切っていることだろうと思いながら、実はちょっとしたズレがあったり歪があったりすることも、話したり伝えりして明確にできるようになったと感じます」

 ポルトガルに渡って得点が増えた印象を受けるが、それはチームにおける役割の違い。よりゴールを求められるがゆえに、積極的にボックスに走り込み、ゴールを狙っている。もちろん、その点でも能力は磨いているが、やはり意識を変えたことが、守田自身も語るように最も大きな成長だ。

 そしてもう一つ、現在のプレーを見て、より磨かれたと感じるのがポジション取りのうまさだ。ミャンマー戦やU-24日本代表との試合でも見せていたが、どこに立ち、どうプレーするか、その振る舞いがピッチの中で効いている。

「川崎で3年間積み上げてきたものが、今のキャリアにも響いているなと実感しています。ポルトガルリーグでは、上位クラブの3,4チームになるとさすがに戦術もしっかりしていて、どういう形で戦うか、特徴がどういうものなのか、というのを感じながらやれるんですけど、中位から下位にかけては基本的に身体能力でサッカーしている。ただそういう相手と対峙した時には、ここが空いているなとか、相手はこういう狙いがあるというのを、早く察知することができるようになった。俯瞰して上から見るほどではないですけど、どこに立ったら相手にとって嫌なのか、何をされたら嫌かとかは分かりますし、システム上、配置だけを見るとここが空いているとか、どこに立ち位置を取ったら、そしてどこを見たら相手が嫌なのかはほとんど分かるので。今に居るリーグ、クラブの中では率先して、ゲームプランを立てる役割を担えると思います」

 相手の狙いを察知し、ウイークポイントを把握し、そして突いていく。川崎Fは相手を見てサッカーをするチームだが、そこで守田は主軸を担い、経験を積み重ねた。過ごした3年間は現在も生きているという。CDサンタ・クララでも、その役割を率先して担うようになっている。

「相手の見定めることについては今、通用している部分だと思う。それを代表でも還元しています。その中で(鎌田)大地とかはすごく、考えが合うというか、やりやすいなと思いますね」

 11日のセルビア戦は自身の成長を知る上でも重要だと語る守田だが、狭いスペースでボールをつけてほしいと望むトップ下の鎌田へ、川崎F時代から鳴らす鋭い縦パスを打ち込んでゲームを動かすことになるかもしれない。

「(セルビア戦は)僕がこの半年でどれだけできることが増えて、対等に戦えるようになったのかを試す場だと思います。楽しみですし、個人的にも非常に大事な試合になる。これまではアジアの相手で公式戦ではありましたけど、若干、力の差がある中での試合でした。今回の相手の状態は分からないですけど、すごくレベルの高い試合になると思うので、率直に楽しみです」

 単身海外に乗り込み、よりタフになった守田。相手の出方を素早く見定める能力を、代表でもしっかり発揮していきたいという。その能力は、森保ジャパン発足時から指摘されてきたチームの課題を解決する手段にもなり得る。指揮官は「修正力」や「対応力」の獲得を目指してきたが、その前段としてピッチ上で何が起こっていて、何をすべきなのか、瞬時に把握することが必要だろう。守田がその力を発揮することは、チームにとって大きなプラスだ。

 セルビア戦で守田がピッチ上のどこに立ち、どんなプレーをするのか。その振る舞いに注目だ。