日本代表は7日、カタール・ワールドカップアジア地区2次予選のタジキスタン戦に臨み。4-1で勝利を飾った。すでに最終予選を進出を決めている日本は、代表経験の浅い選手を複数先発させ、前半はリズムをつかめなかったが、次第にゲームを掌握。きっちりゴールを重ねて勝利を飾った。

上写真=先制ゴールを決めた古橋亨梧を南野拓実と川辺駿が祝福(写真◎JMPA早浪章弘)

■2021年6月7日 ワールドカップ・アジア予選2次予選(@吹田S/リモートマッチ),
日本 4-1 タジキスタン
得点:(日)古橋亨梧、南野拓実、橋本拳人、川辺駿

ミスが多かったのは私の責任(森保監督)

 日本は、すでに最終予選進出を決めている。このタジキスタン戦は言わば消化試合。勝利を目指すのは当然にしても、どんなトライをするかが、注目された。

 果たして森保一監督は代表歴の浅い選手たちを積極的に起用した。中谷、山根、川辺、古橋らが先発に名を連ね、公式戦の舞台に上がった。今回の試合について監督は「チャンレジすること」をテーマに掲げた。全体練習ができたのは数えるほど。ミスが起こるのは織り込み済みで、積極性を出すことを選手たちに求めた。

 実際、『合わない』場面は散見された。パスがずれたり、短くなったり。とくに前半はピッチ内の呼吸の乱れが顕著だった。攻撃では守備の局面で6バックで守る相手に手を焼いた。ブロックの中でボールを受ける選手がおらず、縦パスが入らない。相手のレベルの違いはもちろんあるものの、先のミャンマー戦とは異なり、密集の中で受けられる選手が南野しかおらず、ノッキングする場面もあった。

 だが、指揮官が望んだとおり、相手の状況を見つつ、選手たちは修正を施していく。幅を取り、ブロックを広げて、攻め筋を作っていく。6分には山根の縦パスから浅野がゴールを狙い、こぼれ球を素早く拾った古橋がシュート。ゴールをこじ開けた。その3分後には左サイドを崩されて2次予選初の失点を喫したが、そこからチームは崩れることなく、しっかりリズムをつかんでいった。前半終了間際の40分には、山根、古橋とつなぎ、折り返しに南野が飛び込んでタジキスタンを突き放した。

 後半に入っても日本は攻め手を緩めなかった。51分に橋本が加点し、71分には川辺がダメを押す。結果、4ゴールを集めて勝ち切った。

「ミスが多かったのは私に原因があると思います。なぜかと言えば、選手をたくさん代えたからです。理想は誰が出てもすぐ連係が合うことですが、相手の強度もありましたし、その中で全体練習が1回だったところでパーフェクトに合わせるのは難しいと思って選手たちを送り出しました。ミスが多くなるのは、ある程度予想できた中で、試合の中でチームのクオリティーを上げていこうというところを、選手たちが粘り強く継続力をもってトライしてくれたと思います」

 前半のうちに2ゴールを挙げたものの、ボールがつながらないなどミスはあった。だが、指揮官はその中で焦れずに攻め手を探り続け、勝利を手にした点を評価した。最終予選を見通すなら、依然としてコロナ禍にあることで、海外組を招集できないなど不測の事態も考えられる。国内組の底上げ、つまりはチームの層の拡充はマストだ。その意図がこの日の起用には表れていた。試合中に古橋をサイドとトップでプレーさせ、川辺をボランチからサイドに回し、谷口をCBではなくボランチとして途中投入したのも、チームの『幅』を作るため。

「われわれの高い目標へと進む中で、より多くの選手に経験してもらい、戦いながらワールドカップの道につないでいく。選手たちがそれを共有しながやってくれたのは、非常にポジティブなことだと思います。どういう不測の事態が起こるか分かりませんので、選手層の幅を広げながらより高い頂点を目指す。レベルの高い選手がいつでも代表に入れるというものを持っておきながら、そのときの条件に合った選手を選びながら勝利をつかんでいくことは大事。幅を広げながらより強力なチームをつくっていきたい」

 上ばかりを見るのではなく、横もしっかり見る。チーム作りの鉄則だ。より高い場所に至るには、横にもしっかりレンガを積んで足場を固める必要がある。縦にばかり積んでも、高さを出しても、目標の場所に至る前に足元がグラついて崩れる可能性がある。幅をつくることは大事。森保監督の狙いは、まさにそこだ。

 この試合は、先を見据えたトライ。初ゴールを挙げた橋本、川辺、フル出場した中谷らが得た経験はそのままチームの収穫としたいところ。日本はこの後も11日にセルビアとの親善試合に臨み、15日にキルギスと2次予選の最終戦を戦う。いかにトライし、有意義なものとするか。6月シリーズの過ごし方が、最終予選に、ひいてはその先にもつなっていくーー。

取材◎佐藤 景