3月シリーズで初代表の一人となったのが、前川黛也。かつての日本代表GK前川和也さんの息子として話題だ。キャップを獲得すれば「親子2代」の守護神として名誉なことだが、それ以前に自分の良さをアピールするのに必死だ。

上写真=サッカーを楽しむのが前川黛也のモットーだという。それは日本代表でも変わらない(写真◎JFA)

「できること以上のことをやらないと開き直って」

「親子2代の日本代表GK」まであと少しだ。

 今回の3月シリーズで初めて招集されたメンバーの一人が、GK前川黛也。サンフレッチェ広島などで活躍した元日本代表GK前川和也さんを父に持つ。

 その父の188センチよりも大きな191センチのサイズを武器に、ヴィッセル神戸のゴールを死守している。その活躍が認められ、今回初めて選ばれた。

「その頃は赤ちゃんでしたし、物心ついたときには引退間際だったので記憶にないんです」

 1994年生まれだから、ちょうど父が現役で最も輝いていた頃だ。

「代表の試合も特に記憶にないですし、見たことはありません」

 モンゴル戦で出場することになれば、日本のゴールマウスを守る名誉ある親子になる。そのために、初めての代表活動で刺激を受けながら自分の長所をアピールしてきた。

「シュートストップという強みは生かせていると思うと同時に、レベルの高いところで基礎の高さやプレーの判断、自信といったものは他の先輩キーパーより、そしてフィールドプレーヤーも含めてまだまだ足りないなと、この1週間で感じました。そこも含めて吸収していきたいと思います」

 吸収、という言葉を繰り返した。背番号1の西川周作、12の権田修一に続いて与えられたのは、23。GKの2人の先輩から、他の仲間から何かを手に入れようと貪欲だ。

 昨年はAFCチャンピオンズリーグでベスト4入りを果たし、国際舞台も経験した。準決勝ではスーパーセーブで失点を防いだ一方で、ミスからPKを献上して逆転負けを喫した。涙した。

「できること以上のことをやらないと開き直って、サッカーを楽しむことをモットーにしています。ミスはもちろんあるけれど、失点や大きなピンチを招くのを事前に防ぐというところは良くなっています」

 あの経験がまた一つ前川を強くした。父もまたミスを克服して大きくなったのだ。

「前川和也の息子ではなく、前川黛也として頑張っていきたい」

 父が手にした17キャップを超えたい思いを胸に、今日も楽しんで練習に励む。