追加招集であっても、選ばれればもう関係ない。稲垣祥はこのチャンスを生かそうと、代表活動で精一杯アピールに努めている。3月30日のモンゴル戦で出番をつかめれば、幅広い動きと得意のミドルシュートで勝利に貢献するつもりだ。

上写真=稲垣祥は日韓戦は出番がなかった。モンゴル戦こそ!(写真◎JFA)

「でも、負けないポイントはあると思います」

 セレッソ大阪の原川力の負傷で追加招集となったのが、稲垣祥だった。29歳の初代表。チームに呼び寄せたのは、サンフレッチェ広島時代の2014年に監督だった森保一日本代表監督だった。

「正直、びっくりしました。でも、フラットに見てくれているんだなと思いました。あのころは試合に絡めなくてキャリアの中でも苦しい時期で、でもそれも経験したがらいまがある

と思います。経験したあとの姿を森保さんにしっかり見せたいなと思いますし、こういった舞台で改めて一緒に仕事ができることはうれしく思います」

 これも人の縁だが、その苦しい時期に心に決めたことがちゃんといまに続いている。

「当時は自分が試されていると日々感じながら練習していました。サッカー選手なら多くが試合に絡めない時期を経験することありますが、そこでどういうメンタルでモチベーションを保ってやれるかが選手として大事になってきます。そういった部分でしっかりやりきれる選手でありたいとキャリア過ごしてきたんです」

 試されている。だから、負けない。自分を見つめ直すべき時期だったのだ。

 そしてついに、日本代表にたどり着いた。だが、まだ選ばれただけの存在だという自覚は強い。3月25日の日韓戦では遠藤航と守田英正がボランチで出色の活躍だった。同じポジションの稲垣はどう見ていただろうか。

「やっぱり2人は日本を代表するボランチだと改めて思いますし、必要な資質を兼ね備えていると思います。彼らから学ぶことも多いですし、一緒にやっていていろいろ感じながらプレーさせてもらっています」

 そして「でも」と言葉をつなぐ。

「でも、負けないポイントはあると思いますし、そういうところを評価されて選ばれているので、その部分を出していかなければいけない立場だと思っています」

 日韓戦には出場できなかったから、30日のワールドカップ2次予選、モンゴル戦ではチャンスをつかみたい。そのために必要な「そういうところ」を、稲垣自身の言葉を借りて説明すると…。

「次の試合でチャンスがあれば、自分自身の良さであるカバーエリアの広さや奪い切るところ、ミドルレンジからのシュートを出していきたいと思います。シュートに関しては、相手が引いた状態だとより生きてくると思います。ストロングポイントはどんどん出していかなければいけない立場ですから」

 縁あってつかんだチャンス。試合に出て、大得意の強烈ミドルを突き刺して、日本サッカーの歴史に名を残したい。