3月25日の韓国戦で日本代表デビューを果たし、いきなり初ゴールも決めた山根視来。最高の滑り出しとなったが、本人は満足するはずもない。戦えば戦うほど彼我の差を痛感するこの貴重な日々に、さらなる向上を誓うのだった。

上写真=日韓戦で代表デビューで初ゴール。山根視来はこれに甘んじてはいない(写真◎小山真司)

「遠く及ばないと感じています」

 例えば、体を温める目的もあるボール回しで、選手たちが冗談か本気か、ラインを割ったか割っていないかを大声で主張しているのを見たことがあるだろう。山根視来はそこに「差」を見つけた。

 3月25日の韓国戦で日本代表初出場初先発初ゴールとヘッドラインを独占したが、そこから2日が過ぎ、興奮も落ち着くと冷静に周りが見えてくる。

「こういうところ(代表)で急に集められてサッカーをしていると、ボール回し一つとっても主張するところは、冗談交じりでもあるけれど、触ったとか触ってないとか主張しあっていて、そういう部分を最初から出していかなければいけないと思いました。国内組は初招集も多かったから海外組の選手のそういうところを見て遠慮もあったけれど、最初からちゅうちょなく、代表に何をしに来たのかを表現するためにはいい見本となる選手がたくさんいます」

 それを守田英正に見たのだ。天皇杯決勝の1月1日まで一緒にボールを蹴っていた仲間が、ポルトガルのサンタ・クララに移籍して今回代表の一員として戻ってきて、見違えるように主張していた。負けてはいられない。

 だから、デビュー戦ゴールも喜びはしたけれど、もう過去のこと。

「点は取りましたけど、もっと相手の脅威になるところに入っていかなければいけないし、後半に相手が元気になったところの精度や守備の部分は上げていかなければいけないと思います。ちょっとのスキも見せてはいけないですし」

 勝利を告げるホイッスルが鳴るまでピッチに立ち続けたが、プレーに小さな波があったことを認めている。

 冗談交じりでも自己主張する海外組を見て、新しい基準ができた感覚だ。

「数字としては残せましたけど、練習を一緒にやる中で差は感じますし、その基準の下でやっている選手に遠く及ばないと感じています。細かいところはまだまだと思っているので、だからこそ国内でももっと基準を上げてやっていかなければいけないことの方が多いです」

 右サイドバックの主なライバルは、酒井宏樹と室屋成。フランスとドイツでさらに高みを目指す2人に挑んでいかなければならない。川崎フロンターレという日本でも圧倒的な強さを誇るクラブが持つ高い基準でも、まだまだ足りない。そう感じたからこそ、1ゴールに喜んでいられないのだ。