3月25日の日韓戦に向けて、人一倍の覚悟と危機感を抱くのが、吉田麻也だ。韓国と戦う試合はどんな理由があっても負けてはいけなくて、それだけの重みがあることを伝えられてきた。今度はそれを若い選手に託す義務を感じている。

上写真=吉田麻也が韓国と最後に対戦したのはもう10年も前のこと。「対戦するのをずっと楽しみにしていました」(写真◎JFA)

「伝えられていないのは少し危惧があって」

 先人の言葉を血肉にできるかどうか。いま、日本代表には「歴史」が問われているのかもしれない。世代間の断絶の危機を覚えているのが、吉田麻也。日韓戦が持つ重みを何としてでも次の世代につなげる義務感を強く覚えている。

「キャリアの中で一番大事な試合になるんだよということは意識してほしいと思っています」

 直接伝えるのはもちろんだが、コロナ禍で必要以上の選手同士の接触が制限されているから、今回のメディア対応を通じても選手に語りかけたいと切実だ。

 吉田自身が前回、韓国と対戦したのは10年前。2011年8月10日に札幌ドームで行われた試合だった。香川真司の2ゴールと本田圭佑の1ゴールで3-0の完勝。「10年間、ずっと韓国と対戦するのを楽しみにしていたので、個人的にはものすごく大切な一戦になると思っています」と待ち遠しい。

「僕たちがギリギリの世代ではないか」と危惧するのは、その日韓戦の厳しさや重みを先人たちから教え込まれていながら、次の世代に伝承できていないから。

「長く韓国戦をやっていなかったですし、僕が子供の頃に見ていたようにバチバチに予選で戦うという試合はしていないんですよね。だから僕がギリギリの世代じゃないかな。上の世代の人たちから、いかに韓国戦が重要で、勝たなければならない試合だと伝えられたのは。

10年という間が空いてしまったがゆえに伝えられていないのは少し危惧があって、メディアを通じてでも若い20代の選手にこの試合の意味を理解してほしいと思っています。みんなが韓国戦の重要性に気づいて意識を強く持ってもらいたいと思います」

 先輩たちの生々しい言葉が記憶に残る。

「絶対に負けられない試合だと。時代にそぐわないかもしれないけど、足が折れても、とか、体が壊れてもぶつかっていかなければいけない、勝たなければいけないという表現はよくしていましたね。僕より下の世代にそういう表現で伝えるのは合っているかは分からないけれど」

 もちろん、言葉と実体験がセットでなければ説得力はない。一方で、体験したあとでいくら話しても伝えきれない。だから、このタイミングで韓国戦が巡ってきたのは歴史をつなぐビッグチャンスなのだ。

「韓国は同じアジア人だけどフィジカル的に日本より優れているところは間違いなくあると思うので、一つひとつの勝負に勝っていくことが大切になってくると思います。メキシコと前回対戦したとき(2020年11月)に分析で(メキシコが韓国と戦った)試合を見ましたけど、技術的に優れている選手も多いし、後ろはフィジカル的に強いというのが最近の印象で、そこが一つのキーになるんじゃないかと思っています。いかにそこでたたくか、そして自分たちの土俵に持っていけるかだと思います」

 韓国の強さがどれほどのものか、打ち勝つにはどれだけ強くなければいけないのか。それを実感する90分になるはずだ。

「今回は新しい選手が入っているので、もちろん各々のパフォーマンスやアピールも大事になってきますけど、チームとしてもいい組織をつくらなきゃいけない、チームのベースを固めなければいけない、やり方を浸透させなければいけない、といろいろやらなければいけない点がたくさんあります」

「短い時間でいくつ作り上げていけるかということと、もちろん経験が少ない選手がこういう試合に入っていきなりいいパフォーマンスをするのは難しいと思うので、僕がプレーで示していかなければいけないですし、しっかり引っ張っていけるようにしたいと思います」

 個人で能力の高さを示すこととチーム力を高めること。その両方を追い求めながら、絶対に勝たなければならない韓国との決戦の意義を、言葉で、プレーで示す覚悟だ。