日本代表は17日(日本時間18日)、オーストリア・グラーツでメキシコ代表との親善試合に臨んだ。前半は互角の戦いを演じながらも後半に一気に畳みかけられ、0-2で完敗。日本の現在地を知る試合は収穫もあった一方で、多くの課題を突き付けられる結果に終わった。

上写真=激しいプレスでメキシコのロサノのボールを奪わんとする遠藤航(写真◎Getty Images)

■2020年11月17日 国際親善試合(リモートマッチ/@オーストリア:スタディオン・グラーツ・リーベナウ)
日本 0-2 メキシコ
得点:(メ)ラウール・ヒメネス、イルビング・ロサノ

敵将も認めた前半の戦いぶり

 日本にとって年内最後の強化試合。相手はFIFAランキング11位で、ワールドカップ常連国のメキシコ。27位の日本からすれば格上だ。戦前、森保一監督も選手たちも「現在の自分たちの指標となる試合」と位置づけていた一戦だった。

 前半、ペースを握ったのは日本だった。開始直後から猛烈なハイプレスを仕掛けられたが、落ち着いてボールをつなぎ、プレッシャーをやり過ごす。柴崎岳は「一つ二つ外すと後ろに大きなスペースがある」と前日に話していたが、10分過ぎから日本が好機をつかんでいった。

 10分、鎌田がボックス左から進入してゴール前に低く速いボールを供給。中央で待っていた鈴木が足を伸ばすもわずかに届かず、シュートを打てなかった。12分には左サイドから内側に切り込んだ原口がミドルシュートを放つも相手GKオチョアの好守に防がれた。直後のCKでは鎌田のキックに冨安が合わせたがシュートはゴールの枠をとらえず。

 そして15分、ビッグチャンスを迎えた。柴崎のパスを受けてボックス手前左まで持ち込んだ原口が中央へボールを送るとフリーで鈴木がシュート。しかし、またしてもGKオチョアに防がれる。こぼれ球を伊東が拾ってすぐさまシュート放つが、これもオチョアにはじき出された。

 立て続けに手にしたチャンスに決め切れなかったのは痛かった。28分には遠藤の縦パスから、鈴木、鎌田、右サイドの伊東へ展開するなど、相手の守備網を崩すパスワークも見せたが、ネットを揺らせないまま、前半を終えた。

 迎えた後半、2人のインサイドMF+1アンカーの逆三角形から1トップ下+2ボランチへ中盤の構成を変えたメキシコに日本はペースを握られる。前半のように相手を捕まえることができず、自陣に下がらざるを得なくなった。結果、ボールを保持される時間も長くなっていく。

 流れを変えるべく57分に、柴崎に代えて橋本、鈴木に代えて南野を投入するが、ペースを握り返すことはできず。逆にメキシコにゴールを許すことになった。ピネダのパスを受けたヒメネスにボックス内に進入されると、人数はそろっていたものの、ゴールを奪われた。「ワンチャンスをモノにする力の差」を見せつけられた格好。ヒメネスと対峙し、進入を防ごうとボールに足を出して突きながらもシュートを許すことになった吉田はそう言って悔しがった。

 霧が立ち込めて視界が悪くなったピッチ上で、日本が後手を踏む場面が増え、68分にはカウンターからロサノに抜け出されて2点目を献上してしまう。良い時間帯に得点できなかった日本とは対照的にメキシコはペースを握ったら離さず、畳みかける地力を見せつけた。敵将ヘラルド・マルティーノ監督は「日本は非常にいい戦い方をしていたと思います。前半の20分くらいは私が就任して以来、最悪の時間帯だった。ただ、日本には決定力が欠けていた。こうした試合で有利に試合を運んでいるときはそれを結果に反映させる必要がある」と日本を称えながらも、核心を突くコメントを残した。

ワールドカップ8強という高い壁

後半、ピッチは濃い霧に包まれ、視界の悪い中でプレーすることになった(写真◎Getty Images)

 試合は結局、0ー2のまま終了。森保監督は日本の現在地について、こう語る。

「0-2という結果になって、勝負強さという部分で相手に上回られました。世界の舞台で勝っていくためには、まずは攻守のコンセプトをしっかりとするということ、強度が高い中でのプレーのクオリティーを高めていくこと、決定力という部分で勝負強さを身につけていかなければいけないということを学びました」

 相手が中2日でこの試合に臨んでいたが、それでも前半に日本は自分たちの時間帯を作った。指揮官はポジティブな面として言及している。

「もちろん、改善しなければいけないところは攻撃も守備もあると思いますが、チームの戦い方としては、今やっていることを、より長い時間、強度が強い中でやれるように、レベルを上げていければと思います」

 後半になって相手が戦い方を修正し、中盤の強度を高めたのに対し、日本は迅速に対応することができなかった。左サイドバックで出場した中山も試合後に、局面についてはピッチ内で話したが、全体についての確認まではできなかったと振り返っている。前半、パスの循環点となっていたトップ下の鎌田は相手の2ボランチに消され、鈴木に代わって入った南野も孤立。日本の後方からのボールはことごとくメキシコの中盤にからめ取られ、攻撃が滞った。

「後半、われわれも入りの部分では悪くなかったと思いますが、相手が強度を上げてきたときに、何度か攻撃のところでプレッシャーを受けてミスが出てしまった。うまくいかない回数が多くて流れを持っていかれた。予測や運動量によってポジションを取り、相手のプレッシャーを外せるようにしていかなければいけない。できることを、より長い時間できるようにトライし続けないといけない。ただ守るだけで相手に勝てるとは思わないですし、世界の舞台で勝っていくためには、良い守備から良い攻撃と、ボールを握ったときに相手の強度が高くても、かいくぐっていくことが必要」

 指揮官か感じたものを、より率直に口にしたのがキャプテンの吉田だ。「同じ16強でも違いがある」と語った。ロシア・ワールドカップではともにラウンド16で敗退した両国だが、歴然とした差を感じたということだろう。何度か決定的なチャンスを得ながら得点できなかった日本。一方で修正力を発揮してワンチャンスをモノにし、試合のすう勢を決めたメキシコ。そこにはやはり、明確な違いがあった。

「残念ながら得点を奪えず、試合も勝てませんでしたが、選手たちが途中で足を止めることなく戦い続けてくれました。選手たちに負けたショックはあると思いますが、そこから反発力をもって今後の成長につなげてほしいと思います」

 森保監督も認識している通り、ワールドカップで8強入りという目標を達成するには、まだまだクリアすべき多くの課題がある。この日、勝負強さを見せつけられた相手のメキシコでさえ過去7大会は16強の壁を越えられずに涙をのんでいる。今、日本が挑もうとしているのは、それほどに高い壁だ。

 選手個々の経験値は確かに上がった。鎌田の落ち着きやボール争奪戦における遠藤の頼もしさはヨーロッパで戦う選手が増えていることのポジティブな効果と言える。前半、プレッシャーをかいくぐり、押し返してチャンスを生み出した点は、相手が中2日でこの試合に臨んでいたことを差し引いても、日本の積み上げを示すものだろう。

 ただ、掲げる目標を考えれば、まだまだ足りないものがあるのも事実だ。ロシアW杯のベルギー戦しかり、昨年1月のアジアカップ決勝、カタール戦しかり。ピッチ内で相手の状況を把握し、即座に対応していく力を、日本は欲していながらも、いっこうに手にできていない。今回も後半、別の顔を見せたメキシコに後手を踏むことになった。森保監督の交代のカードも、事態を打開することができなかった。

 このタイミングでメキシコと対戦できた意味は大きい。問われるのは、このテストの結果を日本が次にどう生かしていくかになる。

「試合の中で、もっと長い時間、自分たちがコントロールできるようにこれからもやっていきたい」

 すでにロシア大会から2年が過ぎ、カタール大会まで、あと2年となった。代表チームの活動機会はそもそも限られるが、現在はコロナ禍にある。残された時間は、それほど多くはない。