10月9日の国際親善試合、カメルーン戦がいよいよ迫ってきた。13日のコートジボワール戦とともに貴重な日本代表の活動になるが、攻撃の軸として森保一監督の信頼を得ている堂安律は、さらに自分を高めてNIPPONに帰ってきた。

上写真=森保ジャパンで攻撃の主軸を担う。新たなスタイルも身に着けてさらに進化する(写真◎JFA)

特別な選手になるために

 オランダのPSVアイントホーフェンから、ドイツのアルミニア・ビーレフェルトへ。堂安律はこの夏、プレーする場所を移した。

 オールドファンには、国外移籍など夢のまた夢だった1980年代に、尾崎加寿夫が所属したクラブとして知られるが、今季は2部から昇格してきたばかり。オランダの3大クラブからドイツの昇格クラブへの移籍には、堂安ならではの思考が詰まっている。

「移籍したことは環境が大きく変わって、いろいろな部分が頭の中で整理できました。純粋にサッカーがうまくなるために選んだ環境なので、技術よりメンタル的に変化したと思います」

「試合に出られるから選んだわけではないですね。リーグとしてはブンデスリーガが上でも、チームの格としてはPSVの方が上だというのは分かっています。ファンから見るとPSVで活躍した方がビッグクラブに近づくと思われるかもしれないけれど、違和感があったんです。遠回りに見えるかもしれませんけど、自分にとっては近道だと思っています。強くなるため、うまくなるための決断です」

「PSVで11人のスタメンの一人で終わってしまうのではなく、特別な選手になるために、違いを生み出せる選手に化けるためには、大きな成長曲線を描く大きな環境の変化が必要だと思ったんです。いまは充実した環境でプレーしています」

 歯切れのいい言葉はいつ聞いても気持ちがいい。堂安律の堂安律への信頼感は純度100%。より強くなったのは、ゴールへの貪欲さだ。

「(最初に移籍したオランダの)フロニンヘンでは得点力が評価されたと思っていて、PSVでは取れなくなったので序列が下がった気がしていました。海外での評価のシンプルさは、2回の移籍を経験して思うところです」

「得点に飢えている気持ちをむき出しにするところは、変える必要はないと思います」

 新しいクラブでは、インサイドハーフのポジションでプレーしている。新たな発見が堂安を喜ばせる。

「いまのドイツのサッカースタイルは、ウイングだとボールになかなか触れなくて、インサイドハーフだと関与できて満足しているので、そこで能力を上げようと思っています。インサイドハーフは長い距離をドリブルすることが多くなるんですけど、ゴールから遠い低い位置からでも運んでゴールに迫っていけます。代表に還元するとすれば、そのいつものインサイドハーフのプレーができれば助けになると思っています」

 日本代表では主に右のミッドフィルダーとして、小刻みなステップからの突破やバス、パンチのあるシュートで攻撃の主軸を担ってきた。そこに、インサイドハーフ的なスタイルを加えて、プレーの可能性を広げることになった。これは、日本代表にも大きな力になるだろう。

「中でプレーしてトップ下気味でフォワードと絡むのは特徴的な自分のスタイルだと思っています。幅を取るのはサイドハーフだけの仕事ではないし、サイドバックでもボランチでもいい。サイドハーフだからこそワイドに張ってというのではなく、チームの中でポジション変えながらプレーすることが大事であって、左でも右で外に張ったほうがよければやります。意識しすぎるとダメなんです」

 ポジションの名前や役割に付随する常識にとらわれていては勝てないんだ。それを警告しているようにも聞こえる。

 久々の代表で、また気持ちもフレッシュになっている。

「やっぱり楽しみという気持ちが強いのと、あとは勝たなくちゃいけないというプレッシャーじゃないけど、1年ぶりのプレーなのでしっかり見せなければいけないと思っています。楽しみだけではなく、半分半分ですね」

「代表は毎試合重要で、僕にとってもチームにとっても大事なこと。逃していい1分1秒なんかありません。今回に限らず、毎回大事にしています」