2011年の女子ワールドカップ(W杯)で世界一に輝いた、なでしこジャパンの現地ドイツでの軌跡を追った週刊サッカーマガジンの連載「日々野真理のなでしこ観察日記」が、19年女子W杯、23年女子W杯に続いて復活! シーズン4としてAFC女子アジアカップの戦いに密着していた連載も、今回が最終回です。6大会連続でW杯中継のインタビュアーを務めるなど、女子サッカーを長年取材してきた筆者が、感動の優勝への舞台裏を綴ります!

交わしていた約束

 20日、ニルス・ニールセン監督とキャプテンのMF長谷川唯選手が決勝前日の記者会見に出席。決勝用のボールとトロフィーが飾られているのを見て、私も決勝に向けて緊張感が増してきました。

前日会見で優勝トロフィーとポーズを取るニールセン監督

トロフィーには歴代優勝国の名前が

左からFW千葉玲海菜選手、DF守屋都弥選手、MF松窪真心選手。選手たちの笑顔が日に日に増えていきました

決勝の前日、大会マスコットの『ナーラ』がインタビュースペースに乱入!?

 21日、これまでとは全く違う雰囲気に包まれたスタジアム・オーストラリア。あらゆる場所でスタンバイするスタッフのあわただしさや緊迫感が、決勝の空気を感じさせます。

 こんなときこそ、いつもどおりが大事! と私も平常心を意識。選手到着時のアライバルインタビューエリアで会場入りを見ていると、こちらもいつもどおり、GK山下杏也加選手がDJ役となり、スピーカーで『Choo Choo TRAIN』を響かせながらやってきました。後ろから歩いてきたMF松窪真心選手も口ずさみながら、とてもリラックスしている様子。

 あとで聞いたら、山下選手はONE OK ROCKの『Wasted Nights』もかけていたとか。この曲の歌詞には『無駄な夜はもういらない』『悔いなく、いまを生きよう』といった意味が込められているそうで、山下選手からのチームメイトへのメッセージでもあったのでしょうね。

 2日前は6万1000枚だったチケット販売枚数が次第に増え、蓋を開けてみたら7万4397人という大観衆の中での決勝。スタンドはマチルダス(オーストラリア女子代表のニックネーム)を応援する、黄色いシャツ姿のサポーターの熱気に包まれていました。
 
 完全アウェーの空気を一変させたのは浜野選手。17分、左サイドで長谷川選手のパスを受けると、振り向きざまに右足で放ったミドルシュートがゴールネットを揺らしました。その後は後半にかけてオーストラリアの猛攻を浴びましたが、全員でしのいで1-0で勝利。見事に2大会ぶり3回目の優勝を手にしました。

 全試合にスタメン出場し、ピッチ内外でチームをけん引した長谷川選手が優勝トロフィーを掲げると、ゴールドやピンクの美しい紙吹雪とともに、みんなの笑顔がはじけました。DF高橋はな選手の『森脇芸』も飛び出して「アジアの舞台で見せることができて最高でした。次は世界に広めていきたいです」と笑顔。すっかり高橋選手のものになっていますね!

開催国オーストラリアとの激闘を制して優勝を勝ち取り、なでしこジャパンの選手たちが最高の笑顔!(写真◎Getty Images)

 決勝点の浜野選手も「チームメイトみんなに感謝したいです。まだまだできるな、というところもありますが、自分の目標としていた優勝ができて、ちょっとほめてあげたい」と満面の笑み。長谷川選手は、大会中の負傷でチームを離脱したDF石川璃音選手も含め、26人全員で戦えたことを強調しつつ「前回大会の悔しさがある中で、今回これだけの多くの人の前で優勝できてよかった。初めてキャプテンとしてトロフィーを掲げさせてもらえました。みんなのおかげです」と目を輝かせていました。

 ミックスゾーンでのインタビュー終了後、DAZNの番組に電話出演して、すべての仕事を終えてスタジアムを出たのは、日付も変わった深夜1時頃でした。あっという間とも感じた、濃密な時間を過ごした22日間。チームの成長を肌で感じることができて、今後のなでしこジャパンの歩みがますます楽しみになる、そんな大会でした。

 試合ごとに結果を出し、自信を得たことでリラックスし始めた若手選手の姿。決勝に照準を合わせ、ぶれることなく戦い、空気を作っていた経験豊富な選手たち。仲間のことを自分のことのように喜び、選手たちが「このチームが大好き」と話す回数が増えてきたこと。それらすべてに、チーム力を上げる大切な要素が詰まっていたように感じます。

 一方で、現地で目の当たりにしたオーストラリアの女子サッカーの人気の高さ。どうすれば日本の女子サッカーの人気も高まっていくのか、そんなことを考えさせられる大会でもありました。

 最後に――。
 
 実は当初、この大会の取材に行くかどうか迷っていた私の背中を押してくれたのは、DF南萌華選手でした。「絶対に来てください! 真理さんにインタビューしてほしい!」と、うれしいことを言ってくれたので、オーストラリア行きを決意したのです。そのとき「優勝してね!」「頑張る!」と交わしていた約束を、見事に果たしてくれました。素晴らしい景色を見せてくれて、本当にありがとう!

背中を押してくれた南選手と。約束を果たしてくれてありがとう!

 なでしこジャパンの歩みは、まだまだここから。今度は世界の舞台でトロフィーを掲げる姿を見せてほしい!

取材・写真◎日々野真理