AFC女子アジアカップでベスト4に進出し、2023年のFIFA女子ワールドカップへの出場権を獲得したなでしこジャパン(日本女子代表)。その喜びに浸る暇もなく、池田太監督は世界クラスのチームを作るために思考を巡らせる。ワールドカップ出場、アジアカップ3連覇に続く「第3のミッション」のために。

上写真=池田太監督はワールドカップ出場権を獲得し「次は準決勝」と一歩一歩進む(写真◎AFC)

「大会は選手を、チームを成長させてくれます」

 なでしこジャパンを率いる池田太監督には、女子アジアカップの舞台でとても難しいタスクが与えられている。

 ワールドカップ出場権を獲得すること、大会3連覇を達成すること、そして何よりも、「第3のミッション」として、新しいなでしこジャパンをつくり上げることである。それをすべて、新型コロナウイルスのパンデミック下における厳しい環境で達成しなければならないのだ。

 第1の目標は達成した。準々決勝のタイ戦で7-0という圧勝。余裕を持って2023年のワールドカップに出場する権利を手にした。残り2試合に勝てば、3連覇を達成する。まずは準決勝で中国を倒し、韓国とフィリピンの勝者と戦う決勝に進んでいく。

 3つ目の目的が最も手強いだろう。2023年の女子ワールドカップで優勝するために、ふさわしいチームを作る必要がある。アジアカップはその最初の一歩だ。

「大会は選手を、チームを成長させてくれます。まずは最初のミッションであるワールドカップ出場権を獲得できたので、いまはもう一つの目標であるアジアチャンピオンへと、選手はメリハリを持ってやってくれています。そういうところでも、大会の中で成長しています」

「世界」からの逆算として、チーム発足から言い続けてきたことが「奪う」。勝利を、ゴールを、ボールを奪う作業が、女子アジアカップで試されてきた。

「押し込む時間、イーブンな時間といろいろありますが、切り替えの速さのところ、攻撃して奪われたところから守備に切り替わる瞬間の速さ、奪ってから攻撃に出る速さは、どの試合でもある程度は習慣づいてきたと思います」

 準決勝と決勝で、精度も強度も回数もさらに高めていくつもりだ。

 この「奪う」をベースにしたチームビルディングで、特徴的なのが選手の起用法だ。主にセンターバックを務める三宅史織や乗松瑠華を左サイドバックに起用したり、宝田沙織を左右のサイドバックと左サイドハーフで、長谷川唯をサイドハーフと1.5列目でプレーさせたり、猶本光もボランチのほかに右サイドハーフで投入している。大会に登録された限られたメンバーの中でチームの戦い方のボリュームを増やす作業に、池田監督の狙いが反映されているのではないだろうか。

「サイドバックに限らないという前置きはありますが、対戦相手の特徴によって特に欧米のチームではサイドにスピードのある選手がいれば対応しなければいけないですし、力関係によってこちらのビルドアップが相手の脅威になるのであれば、ボールを動かすことに長けている選手をサイドに置きたいと思っています。相手に応じてというところも踏まえて、いろいろなポジションでいろいろなタイプの選手が成長していくのを見ながら考えています」

 前進と後退を繰り返しつつ、池田監督の言葉を借りれば「試行錯誤しながら」、アジアカップの場でなでしこジャパンが鍛えられていく。その成長の高さはやはり、結果によって変わってくるだろう。

 残りは2試合。勝たなければならない。油断はなく、意欲が満ちている。