AFC女子アジアカップでベスト8進出を決めているなでしこジャパン(日本女子代表)。ここからノックアウトステージに入り、1月30日にタイと準々決勝を戦う。FW田中美南は3試合でゴールはまだないが、「焦りはない」。キレが増してチャンスを作っている充実感があるからだ。

上写真=田中美南はノーゴールではあるものの、「焦りはない」と頼もしい(写真◎AFC)

「取れるときに取れるよって言ってくれている」

 田中美南、3試合ノーゴール。

 岩渕真奈は気遣って、ゴールを決めることができていないことにフォーカスしないように周囲に訴えた。田中美南はどんな思いなのか。

「焦っていないんです」

 プレーを見る限りでは、それは明らかだろう。初戦のミャンマー戦では先発し、連戦を考慮して前半のみのプレー。2戦目のベトナム戦も先発して76分までピッチに立ち、第3戦の韓国戦は62分から登場した。どの試合も、攻撃センスの高さをプレーで示し、起点になって周りを引き立てたと思えば、コンビネーションでゴールに迫り、強烈なフィニッシュを見舞った。リズムはいい。

「体も切れてきているし、動きの質は上がっています。ゴールは期待されていますし、そこを意識しているので、チームにいい影響を与えてゴールで貢献したい」

 焦っていないからといって、ゴールへの欲求が色あせているわけではない。

「ブチさん(岩渕)だけじゃなくて、点を取れていないことで自分が責任を感じているということはみんな分かってくれていて、プレーはナイスと言ってくれています。それで前を向けています。自分でも楽しめているしリラックスしていて、取れるときに取れるよって言ってくれているので、気負わずに、勝つことを一番に考えたいと思います」

 責任を感じながらも、前向きでいられるのは、仲間のおかげだ。

「ゴールは取れていないけど、コンビネーションでチャンスをたくさん作っているし、コンディションは上がっているので、そこまで焦っていないんです。みんなのおかげで勝てているので、そう思えているんですけど、大事な試合で逃さず決められるように、集中していくだけだと思います」

 準々決勝は実母の祖国、タイだ。「お母さんが一番楽しみにしていると思います」と対戦を喜ぶが、「さすがに試合では娘を応援してほしい」と笑った。勝てば9大会連続でワールドカップ出場が決まる一戦。自らのチャンスメークやゴールで勝って、母を少しだけ悲しませるかもしれないけれど、それ以上の大きな喜びを与えたい。