なでしこジャパン(日本女子代表)が明日24日にAFC女子アジアカップの2戦目、ベトナム戦に臨む。日本は初戦でミャンマーに5-0で快勝し、一方でベトナムは0-3で韓国に屈した。日本は連勝で決勝トーナメント進出を決められるか。ベトナム戦のポイントを整理する。

上写真=写真はミャンマー戦の先発メンバー。5-0で勝利を収めた日本は明日24日にベトナム戦に臨む(写真◎AFC)

初戦で初得点の成宮唯に期待

 第2戦で対戦するベトナムは、これまで12戦して全勝、60得点2失点(筆者手元集計)。前回大会でも同グループに入って初戦を戦い、4-0で勝利している。国際大会も頻繁に開催し、女子サッカー熱は低くない。女子アジアカップの同国開催では2008年に澤穂希(チームは3位)、2014年に宮間あや(チームは優勝)が大会MVPに輝いている。

 日本から見るといろいろ相性がいいベトナムだが、FIFA女子ランキング32位が示すとおり、世界大会に出場してもおかしくない存在だ。タイやチャイニーズ・タイペイとともに、日中韓豪の4強に次ぐ、アジアのセカンドグループを形成している。今大会は、オーストラリア以外の5チームに来年の女子ワールドカップの出場権を与えられる(他に2チームがプレーオフへ進む)。ベトナムにとっても、ビッグチャンスが訪れているわけだ。

 今大会の23名は、全員、登録チームがベトナム国内だ。キャプテンの9番、フイン・ニューは、Aマッチ55試合に出場し、51得点。東京オリンピック最終予選・オーストラリア戦では、劣勢の中、相手センターバックの軽率なプレーを見逃さず、ループシュートを決めた。小柄で威圧感はないが、足元はしっかりとしていて、動き出しも早い。守備の第一陣になることは厭わず、警戒は怠れない。

 得点率でニューに迫るのが、12番のファン・ハイ・イェンだ。Aマッチ32戦で27得点。後半から出場した今予選のモルジブ戦で、ダブルハットトリック達成が効いている。ニューほどの怖さは感じないが、2019年の東南アジア女子サッカー選手権では、好敵手・タイとの決勝戦で唯一のゴールを決め、大舞台で結果を出す力も証明しているのが不気味。7番のグエン・ティ・トゥエッ・ズンも油断のならない存在だ。

 東京オリンピック最終予選のオーストラリア戦は5バックで戦い、今大会で2番をつけているルオン・ティ・トゥ・トゥーンを、中央で余らせていた。韓国戦ではこのルオン・ティ・トゥ・トゥーンを、韓国の9番ヨ・ミンジのマークにつけ、3番のチュオン・ティ・キエウを中央に持っていっている。そのほかのディフェンダーも、韓国のキーマンにはある程度、選手を決めてアプローチし、流動的なポジショニングにつり出されたスペースは、前線の選手がカバーするなど、人をつかみにいっていた。

 3失点で抑えたのは、ゴールキーパー、14番チャン・ティ・キム・ タンの功績も小さくない。シュートへの反応が素晴らしく、五輪予選でもオーストラリアのクロエ・ロガーゾのPKをストップし、韓国戦でも奮闘した。なでしこジャパンとしては崩しの引き出しを増やして、ゴールキーパーにノーチャンスの状況を作りたい。

 本来、ミャンマーに比べて、ベトナムのほうが選手層は厚いのだが、第1戦は登録メンバー23名のうち、ベンチに入ったのは17名だけ。最終ライン前でプレーすることの多かった11番ターイ・ティ・タオもベンチ外だった。また、グループAの初戦で3番手格のインド、イランが引き分け、どちらの手にも勝ち点1しか渡っていない。浅い傷で第3戦を迎えれば、勝ち点3でもベスト8進出に望みがつながりそうだ。チーム事情や大会全体の状況など、考慮しなければいけない案件が多く、どんなメンバーで、どのような戦術を用いてくるかは、不透明だ。

 大会初戦に、自身の代表2試合目で初ゴールを刻んだ成宮唯(INAC神戸レオネッサ)は、混戦に強くハードワークも苦にしない。アジアとの連戦では重宝する存在だろう。ベトナムと韓国のゲームを映像で見て「タテに速いカウンター気味の戦いという印象を持ちました。そのカウンターを受けないようにリスク管理をしっかりしたいと思います」と感想を残している。

 また、初戦を勝利したことで、第2戦は、ある程度、プレッシャーからも解放されているのではないか。ミャンマー戦で出番がなかった田中桃子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、乗松瑠華(大宮アルディージャVENTUS)、高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)といったA代表経験の少ない守備陣に、ひとつのミスが命取りになる真剣勝負を経験させ、第3戦以降に備えていきたい。

文◎西森 彰