なでしこジャパン(日本女子代表)は3連覇を懸けて女子アジアカップに臨む。団長として開催地インド入りしている佐々木則夫女子委員長に、池田太監督のチームづくりや今大会のポイントを聞いた。2011年に監督としてW杯を制した佐々木委員長が語る日本の女子サッカーの未来とは?

上写真=国内合宿、インド入り後もチームの雰囲気は良いと語った佐々木則夫女子委員長(写真◎スクリーンショット)

今大会は『ステップ1』

――いよいよ大会がスタートしますが、イギリスから直接インド入りした岩渕真奈選手は、新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたため、開幕前にチームに合流することができませんでした。

佐々木 もちろん中心選手の一人ですし、開幕から一緒に戦うはずでした。ただいまはチーム全員が早く回復することを願っています。本人は現在は無症状で隔離中です。24日に陰性が確認されれば、翌日に部屋から出られますし、本人は責任を感じているようですが、その間はチームで一丸となって戦い、復帰を待ちたいと思っています。みなさんにはご心配をおかけして申し訳ありませんが、チームの力になってくれると思っています。

――池田太監督の就任以来、初めての公式大会になります。日本は3連覇がが懸かっていますが、チームの仕上がりについて、どう見ていますか。

佐々木 国内合宿から見ていて思うのは、バブルの中で行動が制限されていますが、非常に選手たちが前向きで、ケガによる離脱者はなく、良い準備ができているということです。あまり余計なことを考えずに、まい進できていると思います。指揮官が代わってメンバーもある程度、入れ替わった。池田監督のもとで年代別代表として戦ってきた選手を、今まで軸になってきた選手にプラスして融合しています。もちろんまだまだ完成されてはいませんが、1試合1試合を貴重な機会として戦い、成長していければと思います。

――今大会はW杯の出場権もかかっています。アジアと世界の戦い方は異なるとはよく言われますが、女子委員長として内容面で今大会でチームに見せてほしいものはどんなものでしょうか。

佐々木 この大会でいきなり世界で戦えるベースをつくらなければいけないというハードルまでは設けなくてもいいと思っています。W杯出場権を獲得するというタスクはありますが、その中で出来たこと出来ないことをしっかり把握し、ここから始めていくということが大事だという認識です。もちろん、オーストラリア、中国、そして韓国に対して良い戦いができればいいですし、3連覇を目指すのも当然ですが、自分たちの長所短所を認識しながら世界の頂点に進んでいくための確かな一歩を踏み出したと実感できることこそが重要だと思っています。

――では女子委員長として期待するところはどのような部分でしょう。

佐々木 池田監督はU-20ワールドカップで優勝した経験もあります。A代表の監督として戦っていくのはこれからですが、僕の考え方を押し付けるようなことはなく、彼の持っているものを注ぎ込んでチームをつくってほしいと思います。やろうとしていることはしっかりコミュニケーションをとって分かっていますし、池田監督が目指すものは僕もとても重要なものだと考えています。その方向性で進めば、必ず成功すると感じますし、今大会はチームにとっての「ステップ1」になればとも考えています。そして今後、池田監督とスタッフがチーム作りをさらに進めていく中で必要に応じたサポートがしていければと思っています。

――池田監督は「ボールを奪う守備」を求めています。その点は佐々木委員長としても課題を感じているのでしょうか。

佐々木 より連係して守備をより強固にし、自分たちからボールを奪って攻撃の時間を長くする。大づかみで言えば、それが今の取り組みです。良い守備があって良い攻撃もできるという考えに基づいていますし、いまは攻撃も守備も一体になっていますから、その方向は間違っていません。その点はチームが成長するべき部分だと僕も思います。

――一方で昨年11月のオランダ遠征はノーゴールに終わっています。攻撃面の課題についてはどうでしょうか。

佐々木 オランダ遠征で得点がゼロで、結果は1分け1敗(オランダ、アイスランド)でした。ですが、僕自身はそれほど悲観的ではなりません。見るべきプレーもありましたし、その経験をこの大会に生かすように準備してくれています。