女子アジアカップに臨むなでしこジャパン(日本女子代表)は昨年秋に池田太監督のもとで立ち上がったばかりだ。大会前に取材に応じたGK山下杏也加は実戦経験が乏しいチームの現実を冷静に見つめ、どう戦っていくべきか、どう成長していくべきかについて持論を語った。

上写真=トレーニングに集中力して取り組む山下杏也加(写真◎山口高明)

どこでリスクを負って奪いにいくか

 芝の違い、ボールの違いだけならすぐに適応できるものの、気候面や文化の違いを感じ、インド入り後は、驚くことも多かったという。ただ、それら環境面の違いも、すべては「自分次第」と山下は言う。

 昨年11月の欧州遠征には参加しておらず、女子アジアカップのメンバー入りし、池田太監督のなでしこジャパンに加わった。チームが掲げる『ボールを奪う守備』について、外から見ているときには「誰が前に行くスイッチを入れるのか」に注目し、その上で国内合宿の時点では「まだのタイミングを共有できていない」と感じたと率直に語った。

 インド入り後も当然、共通理解を深めることに注力しただろうが、試合を重ねることで精度も高まっていく。グループステージの戦い方について、山下は考えを明かした。

「前から行くことによって相手のゴールが近くなる。得点の可能性も高まり、チャンスが得られる。最初の2試合は自分たちがこの強度でどれくらいできるか。どこまでゴールを取れるか。カウンターは欧州の国と違ってそこまでゴールまで来ないなかで、どこまでリスクを負ってボールを奪いにいけるか」

 チームとしてトライすることが重要だとし、「そういうことは試合でしか表現できない。最初の2試合をプレーの最低基準として、韓国戦に向けて調整していくこと」と、3戦目の韓国戦に、より精度を高めた状態で臨みたいと語った。

 今回選ばれているGKの中では最多の44キャップを誇り、所属するINAC神戸では絶対的な守護神。WEリーグ前半戦の9試合で1失点という堅守を実現し、チームを首位に導いている。冷静にチームを見つめる目は代表でも変わらず、その言葉にはチームを強くしたいとの思いがにじむ。

「昨年の10月にできたチームで、今回の大会は個人能力の部分の大会にもなると思います。それは言い訳にはならないですが、その中でも各々の引き出しをみんなでシェアすることも必要だと思っています」

 立ち上げから間もないチームは実戦経験もまだまだ乏しい。その現実をしっかりとらえた上でやるべきこと、できることを整理しつつ前に進んでいくというのが山下の考え方だろう。今回の女子アジアカップは、もちろん結果を求めつつ、チームのベースを築いていく上でも重要な大会になる。