新生なでしこジャパン(日本女子代表)の船出はノーゴール…。オランダ遠征に臨んでいたチームは2試合を終えて無得点に終わった。強烈な危機感に包まれているのは岩渕真奈。「何もなかった」と猛省し、個々の能力をさらに高める必要性を強調した。

上写真=岩渕真奈は前半途中から登場。74分には絶好機を生み出すテクニカルなパスも見せた(写真◎Getty Images)

■2021年11月29日(現地時間) 国際親善試合(@オランダ・ハーグ)
オランダ女子代表 0-0 日本女子代表

「今日のような試合でできないと意味はない」

「何もなかったな、と思います」

 中1日の日程を強いられてベストメンバーを組めなかったオランダに対して、日本は勝てなかった。4日前のアイスランド戦で残した守備の課題は、修正の兆しを見せた。だが、攻撃が…という不安が岩渕真奈にはある。

 足首の状態が思わしくなく、所属のアーセナル(イングランド)でも出場を見合わせる中で、オランダ遠征に臨んだなでしこジャパンに合流。アイスランド戦の出場は回避して、このオランダ戦もベンチスタートだった。すると、田中美南が相手のタックルでヒザを痛めたことで、38分に急きょ出番が巡ってきたのだった。

「3週間近く空いて試合をして、力を100パーセント出せたとは感じていないですけど、その中でいまできることはやれたと思っています」

 できることの一つが、ライン間で「浮く」ようなポジショニングを取りながら、ボールを引き出して攻撃にアクセントを加えたことだろう。その一つが、74分のビッグプレー。

 左に開いてボールを引き受けたFW菅澤優衣香が後ろに戻し、受けた隅田凜から中央の岩渕に渡る。このとき岩渕は、相手の最終ラインから離れるように後方にステップを踏んでマークを外してから絶妙のスルーパス、抜け出した菅澤がフリーになってGKと1対1の絶好機を迎えたのだ。菅澤の立ち足が遠くなってシュートを打ちきれなかったのが悔やまれるが、狭いスペースでも決定的な仕事ができる岩渕の真骨頂を見た。

「ゴールを目指しながらも遠いと感じていて、いろいろな要素はあると思うんですけど、結局、点が取れないと勝てないし、ディフェンス陣がすごくよかったので、この試合を勝ちきることができなかったのは攻撃の選手として責任を感じます。やるべきことはあると感じました」

 試合の前日には、新チームで自分が求めていくものについて「目標はと聞かれても答えは見つかっていないんです」と慎重な姿勢を崩していなかった。実際にピッチに立ってみても、変わらなかった。

「毎試合、勝って世界一という目標が見えるのが理想だし、当たり前に世界一と言うべきだと思いますが、正直やるべきことがたくさんあるなというのは個人的に感じています。ゴールに向かうバリエーションやゴールへの意識から始めて、その先に大きな目標が見えたらいいなという感じです。いまの段階でこのチームで世界一を目指していますと言うのは少し早いかなと思っています」

 発足したばかりのチームだから、これから積み上げていくしかない。だが、この試合に勝てなかったことが猛烈な悔恨を呼び寄せた。

「意識の部分で共有は日に日にできているけれど、それをいつやるのか、というと、今日のようなゲームでできないと意味はない。個人的な感想としては今日は勝つべきだったと思うし、点が取れなかったのはまだまだで、何もなかったな、と思います」

 オランダ遠征は2試合を戦って1分け1敗。得点0で失点は2。その事実が、危機感をさらに大きくしている。