なでしこジャパン(日本女子代表)は14日、五輪本番前最後のテストマッチとしてオーストラリア女子代表と対戦した。結果は岩渕真奈のPKによる1点を守り切り、1-0の勝利。攻撃面に課題も見えたが、きっちり勝ち切って本大会に向かうことになった。

上写真=PKによる1点を挙げた岩渕真奈(左)と菅澤優衣香(写真◎JMPA早浪章弘)

■2021年7月14日 国際親善試合(@サンガS/観衆2,584人)
日本女子 1-0 オーストラリア女子
得点者:(日)岩渕真奈

高倉麻子監督「勝利で終われたことは良かった」

 前半、日本は後ろに重心がかかった戦いぶりになった。ミドルパスやロングパスを交えつつ、積極的に縦を突いてくる相手に劣勢になってしまう。クリアボールを何度も拾われて、2次攻撃を受けるシーンもしばしば。相手の圧力なかで得意のパスワークは影を潜め、押し込まれた中で戦うことを余儀なくされた。

 とりわけ気になったのは距離感だ。岩渕が機を見て相手の3バックと4人のMFの間にポジションを取ってもボールがなかなか入らない。最終ラインの押し上げもままならず、前線の孤立を招いた。両サイドハーフもサイドバックのサポートを受けられず、塩越、長谷川が外に張るのか、中でビルドアップに絡むのか難しい選択を迫られてボールがうまく回らなかった。

 五分のボールを争う球際バトルでも劣勢になるケースが散見。最初の45分に限っては、オーストラリアの持ち味の方が目立った。ただ劣勢の中でも守備では取りどころ、抑えどころをチームとして共有し、失点を免れる。試合後には熊谷も岩渕も、そして高倉麻子監督もその点を評価したが、前半は攻めの部分で日本の特徴を出せなかった。

 戦前、高倉監督は「自分たちの現状を知る試合」とオーストラリア戦を位置づけていたが、その点からすれば、前半の攻撃は修正点と言えるだろう。後半、相手が6人を交代させてチームバランスが変更された影響があり、かつ指揮官がハーフタイムに「ポジションを取ってボールをつないでいこう」とチームに修正を施したこともあって、徐々に日本らしさが出せるようになっていく。前半にあまり見られなかったサイド攻撃の形もピッチに描けるようになった。

 先制点もそのサイド攻撃からだった。パス交換でボックス左のスペースを長谷川が攻略。その長谷川が上げたクロスが相手DFの手に当たり、PKを獲得した。この試合でなでしこの10番を初めて背負った岩渕がきっちり沈めて日本が1点を奪った。

 その後、日本が62分に4人を同時に代えるなど、ゲームはテストの色をより濃くしていった。その中でも、日本は締めるところを締めて、1-0で勝ち切った。単純なミスもあったものの、「勝ったことは大きい」と選手たちは口をそろえた。課題も出たが、一方で収穫を手にするゲームになった。指揮官の受け止めも、ポジティブだ。

「最近、私たちはなかなかFIFAランク上位のチームと試合をする機会が少なかったんですけど、本格的に世界上位のスピードやパワーを体感しながら、前半は少し堅いゲームになったと思います。後半は相手のメンバー交代などもありましたけれども、私たちも少しゲームの強度にも慣れながら、前半で修正ポイントも話をするなかで、少し自分たちの流れを作ることができたと思います。その中でPKではありましたけど、1点をとって勝利という形で終われたことは、自分たちにとっては非常に良かったと思います。ただ今日の本当に素晴らしいゲームからから良かったことと課題をしっかり選手とともに共有して、いよいよオリンピックに入っていきたいと思います」

 五輪初戦のカナダ戦は1週間後の21日。手にした課題を修正し、収穫をさらに磨いて、金メダル取りに挑む。