東京五輪に臨む、なでしこジャパン(日本女子代表)岩渕真奈がオーストラリアとのテストマッチを控え、オンラインで取材に応じた。五輪前最後の強化試合に向けて、そして本大会に向けて自身の思いと覚悟を口にした。

上写真=オンラインで取材に応じる岩渕真奈(写真◎スクリーンショット)

なでしこの歴史を背負いながら良い大会に

「雰囲気は良いと思います」

 五輪に向けて合宿を張り、準備を進めるチームの状態について聞かれた岩渕の返答だ。その表情からも順調に準備が進んでいるのが伝わってきた。

「いよいよ大会が近づいてきているので、まだ準備の段階で、明日の試合(オーストラリア戦)でどうかという部分はありますけど、やれることはやれているかなと思っています」

 選手間では主に守備面について考えを出し合ってすり合わせを行なっているという。選手同士の距離について話し合い、「全員がしゃべって、良い雰囲気でやれています」。元よりチーム力があるなでしこだが、本大会が近づくにつれ、より一つにまとまっているようだ。

 岩渕自身、今大会に懸ける思いは強い。一つにはコロナ禍という現在の状況がある。

「こういう状況の中で自分たちがあるべき姿というか、本当にピッチで、表現するべきことというのがたくさんあると思う。日本で開催されるうれしさもあるぶん、やるべきことは本当にたくさんあると感じていて。いい意味で緊張感を感じています」

「もちろんWEリーグの開幕とか、今後の女子サッカーという思いはありますけど、本当に、女子サッカーという競技のくくりだけではなく、スポーツの価値が問われる大会なので、そういう意味でも自分たちがこうしてサッカーできていることに感謝しながら、自分たちの立ち位置と言うか、認めてもらうように頑張らなければいけない。色んな要素が今大会にはあると個人的な感じています。本当に選手は一生懸命やるだけだと思います」

 東京には4度目の緊急事態宣言が発出され、その中でオリンピックは開催される。大会の開催に関してさまざまな意見があるのは事実。女子サッカーという枠組みを越えて、今、スポーツの価値そのものが問われていると岩渕は実感していた。だからこそ、「認めてもらえるように頑張らなければ」と言う。これまでの世界大会とは違う緊張感も感じていると話した。

 とくに今大会では10番を背負う。文字通りのエースであり、高倉麻子監督いわく「チームの顔」だ。そうした重圧や責任も、岩渕は引き受けるつもりでいる。

「そこまで背番号を意識しているわけじゃないので、本当に普段通り、今までの8番を背負っていたときのようにやるだけだと思っているんですけど、メディアの方に言われたり、堂安律選手の記事を見たりして、その背番号の重みというのも感じます。彼が『奇跡としか言いようがない』というセリフを言っていましたけど、東京で開催されるオリンピックで選手でいられることがまず奇跡で、本当に重みのある背番号を背負えるということも恵まれていると感じます。背番号どうこうということはそこまでは考えていないですけど、本当に色んな人に試合を見てもらえる貴重な機会なので、自分らしく、似合ったプレーをできればと思っています」

 さまざまな状況が重なり、それこそ奇跡のような巡り合わせの中で臨む東京五輪。過去の世界大会とは異なり、岩渕はケガもなく状態は「すごくいい」という。

「今までの経験を全部ぶつけた上で、自分が優勝させたんだと言えるチャンスがあると思うので、そこはいろんな人から受け継いだなでしこの歴史というものをしっかり意識して、そういうものを背負いながら良い大会にできたらいいなと思います」

 優勝させるーー。コロナ禍で開催される史上初のオリンピック。東京大会で、なでしこジャパンの10番が覚悟を見せる。